はじめに
在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下「技人国」)で働く方が転職すると、新しい会社で迎える最初の在留期間更新では、これまでと同じ書類では足りないことがあります。
出入国在留管理庁(以下「入管庁」)は2026年4月15日以降の申請から中小企業など「カテゴリー3・4」に当たる会社へ転職した後の初回更新で追加の資料を求めるようになりました。
さらに通訳や接客のように言葉を主に使う仕事に就く場合は言語能力(CEFR B2相当)を示す資料も必要です。
この記事では転職した外国人本人と技人国の人材を中途採用した会社の人事担当者に向けて、入管庁の公式資料に書かれている内容を場面ごとに整理します。
2026年10月1日から変わった更新手数料にも触れます。
情報は2026年10月15日に入管庁ウェブサイトで確認した内容です。
転職後の初回更新の書類は「転職先のカテゴリー」で決まる
追加の資料が必要かどうかは転職先の会社がカテゴリー1〜4のどれに当たるかで分かれます。
「カテゴリー」とは入管庁が勤め先(所属機関)を上場しているか源泉徴収税をどれだけ納めているかなどで四つに分けたものです。カテゴリーによって申請のときに出す書類の量が変わります。
| カテゴリー | 主な内容(入管庁の技人国ページより要約) |
|---|---|
| 1 | 日本の証券取引所に上場している企業、国・地方公共団体、独立行政法人など |
| 2 | 前年分の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」で源泉徴収税額が1,000万円以上の団体・個人など |
| 3 | 前年分の法定調書合計表を提出している団体・個人(カテゴリー2を除く) |
| 4 | 1〜3のいずれにも当たらない団体・個人(設立して間もない会社など) |
法定調書合計表とは会社が毎年税務署に出す給与の支払いや源泉徴収税の合計をまとめた書類です。
カテゴリーは本人だけでは分からないため、転職先の人事・経理担当者に確かめることになります。
2026年4月15日以降の運用で「転職後の初回更新」の追加資料が求められるのは転職先がカテゴリー3または4の場合です。
入管庁の更新用チェックシートではカテゴリー1・2についてこの追加資料は挙げられていません。
ただし、どのカテゴリーでも審査の途中で別の資料を求められることはあります。
カテゴリー3・4の会社へ転職したら
カテゴリー3・4の会社へ転職した後の初回更新では通常の更新書類に加えて、転職先の会社に関する資料を出すことになります。
入管庁の更新用チェックシートには「カテゴリー3又は4の企業等に転職後の初回の更新許可申請の場合は、上記資料に加え、以下の資料も併せて提出を」という記載があります。挙げられているのは次の資料です。
- 所属機関の代表者に関する申告書(参考様式)
- 住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書
- 活動内容等を明らかにする資料
- 登記事項証明書
- 事業内容を明らかにする資料
- 直近年度の決算文書の写し
- 言語能力を証する資料(言葉を主に使う対人業務に就く場合。次の章で説明)
- 源泉徴収票等の提出できない理由を明らかにする資料(チェックシート上、カテゴリー3は不要)
このうち登記事項証明書や決算文書のように、会社にしか用意できないものが多く含まれます。
一方、住民税の証明書は本人が住んでいる市区町村で取得するのが一般的です。
入管庁は日本で発行される証明書は発行日から3か月以内のものを出すよう案内しています。
「所属機関の代表者に関する申告書」は会社の代表者がどんな人かを申告する1枚の書類です。
参考様式では代表者が日本人・特別永住者ならチェックだけでよく、それ以外の場合は代表者の氏名(英字)と在留カード番号を書きます。
作成者は会社の職員に限られ、事実と違う内容があれば虚偽の申請と判断される可能性があることを確認する欄もあります。
会社に用意してもらう書類が多いため、更新の直前ではなく、入社した段階で「初回更新にこの資料が必要」と人事担当者と共有しておくことが大切です。
通訳や接客など「言葉を主に使う仕事」の場合
転職先での仕事が「主に言語能力を用いて対人業務等に従事する」ものであれば、その仕事で使う言語についてCEFR B2相当の能力があることを示す資料が必要です。
CEFR(セファール)は語学力を国を超えて比べるための物差しです。
A1からC2までの6段階があり、B2は上から3番目の段階です。
入管庁は提出が必要な仕事の例として「翻訳・通訳」や「ホテルフロントなどの接客業務」を挙げています。
日本語については、次のいずれかに当てはまればB2相当とみなすとされています。
| 区分 | B2相当とみなされるもの |
|---|---|
| 試験 | 日本語能力試験(JLPT)N2以上 |
| 試験 | BJTビジネス日本語能力テスト400点以上 |
| 試験 | 日本留学試験(日本語の読解・聴解・聴読解の合計)200点以上 |
| 試験 | JPT日本語能力試験525点以上 |
| 在留歴 | 中長期在留者として20年以上日本に在留している |
| 学歴 | 日本の大学を卒業、または日本の高等専門学校・専修学校の専門課程・専攻科を修了 |
| 学歴 | 日本の義務教育を修了し、高等学校を卒業 |
注意したいのは入管庁の表現が「業務上使用する言語について」となっている点です。
言語の証明が必要かどうかは国籍や日本語の上手さではなく、「転職先で主にどんな仕事をするか」で判断されます。
代表的な場面を公式資料の記載に当てはめて整理すると次のとおりです(個別の判断ではなく、一般的な整理です)。
| 場面 | 代表者申告書など会社の追加資料 | 言語能力の資料 |
|---|---|---|
| システムエンジニアからカテゴリー3の会社のシステムエンジニアへ転職 | 必要 | 対人業務が中心でなければ、チェックシート上は対象外と読める |
| 貿易事務からカテゴリー3のホテルのフロントへ転職 | 必要 | 必要 |
| 通訳からカテゴリー1(上場企業)の通訳へ転職 | チェックシート上は挙げられていない | チェックシート上は挙げられていない(審査で求められる可能性はある) |
同じ会社でも仕事が接客中心に変わったら
転職していなくてもカテゴリー3・4の会社で仕事の内容が「言葉を使う対人業務」に変わった場合は、更新のときに言語能力の資料が必要です。
入管庁の更新用チェックシートには「カテゴリー3又は4の企業等に所属していて、当初申請していた業務内容から言語能力を用いた対人業務等へ業務内容が変更した際は、言語能力の資料を提出を」という注記があります。
たとえば海外取引の事務で採用した社員を店舗での接客や外国人客の通訳が中心の部署へ異動させたような場面が考えられます。
反対に、以前から同じような仕事を続けている人の更新では言語能力の資料は原則として不要とされています。
ただし、入管庁は「審査の過程で求められることがある」とも書いています。
会社が配置換えを決めるときは本人の日本語試験の結果や学歴を確認し、次の更新で証明できるかを先に確かめておくことが必要です。
新しい仕事が技人国で認められる範囲に入っているかどうかも別に確認が必要です。
転職したら14日以内に本人が入管庁へ届け出る
更新申請とは別に、転職したときは「契約機関に関する届出」を14日以内に本人が入管庁へ出す必要があります。
これは出入国管理及び難民認定法(入管法)第19条の16第2号に基づく義務で、技人国のほか、研究・介護・技能・特定技能などの在留資格が対象です。
前の会社との契約が終わったときと新しい会社と契約したときのそれぞれについて、その日から14日以内に届け出ます。
契約機関に関する届出は本人の義務です。会社が代わりに出してくれるものではありません。
届出の方法は電子届出システム(インターネット)、地方出入国在留管理官署の窓口、東京出入国在留管理局への郵送の3つです。
電子届出システムは24時間使え、履歴も残るため、あとで「届け出たかどうか」を確かめるのにも役立ちます。
会社側にはこれとは別に、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」など、雇い入れた会社としての手続があります。
本人の届出と会社の届出は別のものなので混同しないようにしてください。
もう一つ、転職のときに検討が必要になるのが「就労資格証明書」です。
これは新しい仕事が今の在留資格でできる活動だと入管庁に証明してもらう手続です。
入管庁の案内では申請時期が「交付を受けようとするとき」とされており、転職のたびに必ず申請するものではありません。
ただ、次の更新までの期間が長い人にとっては、早めに確認を受けるのも一つの手段になります。
転職から更新までの流れと本人・会社の準備チェックリスト
転職から初回更新までは「14日以内の届出」「入社後の書類の共有」「満了日の3か月前からの申請」の3つを順に進めると整理しやすくなります。
- 退職・入社した日から14日以内に本人が契約機関に関する届出をする。
- 入社後なるべく早く会社のカテゴリーと、主な仕事が「言葉を使う対人業務」に当たるかを本人と人事担当者で確認する。
- 在留期間が6か月以上ある人は満了日の3か月前から更新を申請できる。この時期に合わせて発行から3か月以内の証明書をそろえる。
- 更新申請をする。
- 許可されたら手数料を納めて新しい在留カードを受け取る。
更新手数料は2026年10月1日から許可される在留期間に応じた金額に変わっています。
窓口申請の場合、たとえば1年なら33,000円、3年以上5年未満なら64,000円、5年以上なら75,000円です。
支払うのは申請時ではなく許可のときなので、どの期間が許可されるかで金額が決まります。
本人のチェックリスト
- 退職日と入社日のそれぞれから14日以内に契約機関に関する届出をした
- 新しい会社のカテゴリー(1〜4)を人事担当者に確認した
- 主な仕事が通訳・接客など言葉を使う対人業務かどうかを雇用契約書や業務の説明で確かめた
- 対人業務が中心ならJLPTの合格証や日本の学校の卒業証明書など、B2相当を示せるものを手元に用意した
- 住民税の課税(非課税)証明書・納税証明書を、発行から3か月以内になる時期に取得した
- 在留期間の満了日と3か月前の日付をカレンダーに入れた
会社(人事担当者)のチェックリスト
- 自社がカテゴリー3・4のどちらに当たるかを前年分の法定調書合計表で確認した
- 所属機関の代表者に関する申告書を自社の職員が作成できるようにした
- 登記事項証明書、直近年度の決算文書の写し、事業内容が分かる資料を準備した
- 従事してもらう仕事の内容を雇用契約書や業務の説明資料で実際とずれないように書いた
- 接客や通訳中心の部署へ配置換えする場合、本人が言語能力を証明できるかを先に確認した
- ハローワークへの外国人雇用状況の届出など、会社側の手続を確認した
よくある質問
転職後の初回更新について、本人と会社から出やすい疑問を公式資料で確認できた範囲でまとめます。
Q1. 前の会社に入るときJLPT N2の合格証を出しています。また必要ですか?
カテゴリー3・4の会社へ転職し、対人業務が中心の仕事に就く場合、更新用チェックシートでは言語能力の資料が提出書類に挙げられています。合格証の写しをすぐ出せるようにしておくと安心です。
Q2. 日本の大学を卒業しています。試験の点数は必要ですか?
日本の大学を卒業していれば、日本語についてCEFR B2相当とみなされます。
この場合は卒業証明書などで示すことになると考えられますが、具体的にどの書類を出すかは事前に問い合わせをするのが確実でしょう。
Q3. 会社がカテゴリー3なのか4なのか分かりません。
前年分の法定調書合計表を税務署に出していればカテゴリー3(源泉徴収税額が1,000万円以上ならカテゴリー2)、出していなければカテゴリー4が目安です。
設立したばかりの会社はまだ合計表を出していないことがあります。
カテゴリーを示す書類を出せないときはカテゴリー4になります。
Q4. 更新の結果が出る前に在留期間が切れてしまいそうです。働いていてもよいですか?
在留期間の満了日までに更新を申請していれば、結果が出るときか、満了日から2か月がたつ日のいずれか早いほうまで、今の在留資格のまま日本にいることができます(入管法第21条第4項で準用される第20条第6項。いわゆる特例期間)。
特例期間は「満了日までに申請したこと」が前提です。満了日を過ぎてから申請しても、この扱いにはなりません。
特例期間中に働けるのは今の在留資格(技人国)で認められた範囲の仕事です。
まとめ
技人国で転職した後の初回更新は「転職先のカテゴリー」と「転職先で主にする仕事」の2つで必要な書類が変わります。
- カテゴリー3・4の会社へ転職した後の初回更新では代表者に関する申告書や登記事項証明書、決算文書など、会社の資料が追加で必要です(2026年4月15日以降の申請)。
- 通訳や接客など、言葉を主に使う対人業務に就く場合は、その仕事で使う言語についてCEFR B2相当の資料が必要です。
日本語ならJLPT N2以上や日本の大学卒業などが当たります。 - 転職していなくてもカテゴリー3・4の会社で仕事が対人業務中心に変わった場合、更新で言語能力の資料が必要です。
- 更新とは別に、転職した本人は14日以内に契約機関に関する届出をします。
- 更新手数料は2026年10月1日から許可される在留期間に応じて変わります。
会社に用意してもらう書類が多いため、入社したときに本人と人事担当者で「カテゴリー」と「仕事の中身」を確認しておくことが準備を楽にする一番の近道です。
参考情報
- 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」
- 出入国在留管理庁「【更新】提出書類チェックシート(技術・人文知識・国際業務)」
- 出入国在留管理庁「所属機関の代表者に関する申告書(参考様式)」
- 出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請」
- 出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出(契約機関に関する届出)」
- 出入国在留管理庁「就労資格証明書交付申請」
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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所




