はじめに

外国人の中途採用を検討する際、面接で次のようなことを言われることがあります。

「前の会社でも『技術・人文知識・国際業務』で働いていました。今度も同じような仕事なので大丈夫です」

前職で問題なく就労していたなら、転職先でも問題なく働けそうに感じるかもしれません。

しかし、前職と業種が同じだからという理由だけで、現在の在留資格のまま働けると判断するのは危険です。

在留審査で確認されるのは、「営業」「エンジニア」「通訳」といった肩書だけではなく、転職先で実際に担当する仕事です。
会社が変われば、同じ業種でも一日の業務内容や求められる知識が変わることがあります。

この記事では外国人を中途採用する企業に向けて、採用前に確認したい在留資格と仕事内容のポイントを説明します。
転職を考えている外国人本人にも役立つ内容となっております。

「前職と同じ仕事だから大丈夫」に含まれる三つのリスク

1.同じ業種でも実際の仕事が異なる

「営業職」という名前だけを見ても、具体的な仕事内容は分かりません。

前職では海外顧客との商談、外国語での契約調整、市場調査などを担当していた人が、転職後は店舗での接客、商品の陳列、レジ対応を担当することも考えられます。

どちらも会社の中では「営業」と呼ばれるかもしれませんが、実際に行う活動は同じではありません。

また、「ITエンジニア」という職種名でも、システム設計やプログラミングを担当するのか、機器の運搬や単純な入力作業を主に行うのかによって内容は変わります。

在留資格との関係を確認するときは業種で判断するのではなく、一日のうち何を、どのくらい担当するのかまで具体的に整理することが大切です。

おすすめは出社してから帰社するまでの仕事内容を1時間単位で書き出してみることです。

2.前職の申請内容を転職先が把握できていない

転職希望者が以前の会社で働いていたとしても、転職先が以前の申請内容を知っているとは限りません。

本人の学歴や職歴、前職の具体的な業務、以前提出された説明資料などが分からない状態では「なぜその仕事が現在の在留資格の範囲に含まれていたのか」まで判断できません。

さらに、前回の許可時と比べて現在の会社、契約内容、担当業務は変わります。
そのため、在留カードの在留資格欄だけを見て採用可否を決めるのは不十分です。

過去の申請内容を本人が把握していない場合は、分からない部分を推測で埋めないようにします。
確認できる資料と、確認できない事項を分けて整理しましょう。

3.内定後に採用計画を見直す懸念がある

仕事内容を十分に確認しないまま採用を決めると、後から次のような問題が生じる可能性があります。

  • 違う業務内容に変更せざるを得ない
  • 内定取り消しになる可能性がある
  • 次回の在留期間更新時に、転職後の仕事内容について詳しい説明を求められる
  • 入社時期や人員配置を再調整せざるを得ない

申請時の許可や更新の判断は本人の経歴、契約内容、仕事内容、提出資料などを踏まえて入管が総合的に判断します。

ですから会社にとって重要なのは今一度採用計画と外国人の行う業務に関連性があるか確認することです。

採用面接で確認したい6つのこと

1.在留カードをチェック

まず在留カードの原本で現在の在留資格、在留期限、就労制限の有無などを確認します。
裏面に記載がある場合もあるため、両面を確認します。

在留カードが有効であることと、採用予定の仕事を行えることは別の問題です。
カードを確認したら、次に仕事内容を確認します。

2.前職の肩書ではなく、実際の業務内容を確認

「営業でした」「事務をしていました」という回答だけではなく、次のように具体的に聞きます。

  • どのような顧客を担当していたか
  • どの言語を、どの場面で使っていたか
  • どのような資料や製品を扱っていたか
  • 一日の中で各業務にどの程度の時間を使っていたか
  • 現場作業や研修はどのような内容だったか

前職の業務を詳しく聞く目的は本人を疑うためではありません。
転職先の仕事との違いを正確に把握するためです。

3.転職後の仕事を確認

「将来は海外事業を任せたい」という予定だけではなく、入社直後に実際に担当する業務を洗い出します。

研修期間を設ける場合も、期間、場所、内容、研修後の配属を具体化します。
一般的な研修を含むことが直ちに問題になるとは限りませんが、研修という名称だけでどのような業務でも認められるわけではありませんので注意してください。

4.本人の学歴と職歴を総合的に判断

現在の在留資格や予定する業務によって学歴、専攻、実務経験などの確認が必要です。

卒業証明書、成績証明書、過去の在職証明書など、本人が保管している資料を確認します。
外国語の書類については、日本語訳の準備が必要になることもあります。

学歴や職歴と仕事内容の関係は、学科名だけで一律に判断できません。
個別の履修内容や経験まで確認しなければ結論を出せない場合があります。

5.入社までのスケジュールを組む

在留期限が近い場合は、転職に伴う確認と在留期間更新の準備が重なることがあります。

入社日だけを先に決めるのではなく、在留期限、退職日、新しい雇用契約の開始日を時系列で並べましょう。
必要な手続や準備期間は個別事情で変わるため、余裕を持って確認することが大切です。

6.届出事項がないか確認

就労系の在留資格には所属機関との契約終了や新たな契約締結について、外国人本人による届出や所属機関による届出が必要となるものがあります。
その際、本人に任せきりにせず、各自が情報を共有しておくとスムーズな就労につながります。

前職と転職先の仕事内容を比較する確認表

確認項目備考
職種外国人から聞いた情報に資料
主な業務名称ではなく、実態としての業務を確認
一日の業務割合1時間単位で仕事内容を書き出す
使用する専門知識・技術業務との関連性が認められるか
外国語を使う場面転職先で外国語を使用する業務はあるか
勤務場所双方の認識にズレがないか
研修内容合理的な研修内容や期間であるか
雇用条件内定時と相違ないか

転職時に確認したい入管手続

所属機関に関する届出

「技術・人文知識・国際業務」など一定の在留資格では、勤務先との契約が終了したときや、新たな契約を結んだときに外国人本人が出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。

届出は転職後の仕事が現在の在留資格に適合することを許可する手続ではありませんので、勤務先が変わったことを知らせる届出と仕事内容が在留資格の範囲に含まれるかという確認は分けて考える必要があります。

届出の対象、期限、提出方法は本人の在留資格や状況に応じて申請時点の公式案内を確認してください。

在留資格変更許可申請

転職後に行う活動が、現在の在留資格で認められる活動と異なる場合には在留資格変更許可申請をする必要があります。

変更するかどうかの基準は業務の名称ではなく、実際に行う業務を基準に確認します。

就労資格証明書交付申請

就労資格証明書は外国人が行うことのできる活動などを証明する文書です。
取得は必須ではありませんが、転職後の仕事内容が現在の在留資格の範囲に含まれるかを確認することができるので便利です。

また、証明書がなくても確認が不要になるわけではありませんので注意してください。

採用企業と外国人本人が用意するもの

外国人本人が用意する情報

  • パスポートと在留カード
  • 最終学歴と専攻が分かる資料
  • 前職までの職歴が分かる資料
  • 前職の具体的な仕事内容
  • 退職日と過去の申請状況

採用企業が用意する情報

  • 雇用契約書または労働条件通知書
  • 入社直後の具体的な仕事内容
  • 配属先、勤務場所、勤務時間
  • 会社の事業内容
  • 採用理由と本人の知識・経験を生かす場面
  • 研修を行う場合は、その期間と内容

本人に説明した内容と求人票、雇用契約書、配属部署の予定が一致しているかを確認します。

まとめ


外国人の中途採用では、「前職でも同じ在留資格で働いていた」「今回も同じ業種である」という情報だけで判断すると思わぬトラブルにつながる恐れがあります。

採用前に以下の項目を確認しましょう。

  1. 現在の在留資格と在留期限
  2. 前職で実際に担当していた仕事
  3. 転職先で入社直後に任せる仕事
  4. 本人の学歴・職歴と仕事内容の関係
  5. 退職日、新しい契約日、入社日の時系列
  6. 届出、在留資格変更、就労資格証明書を検討する必要性

外国人の中途採用を検討しており、「現在の在留資格で予定する仕事を任せられるか」「前職とどこまで比較すればよいか」と迷っている場合は、採用を決定する前の段階からご相談することをお勧めします。

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参考情報

執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所