はじめに

技能実習から特定技能1号への在留資格変更許可申請を行ったものの、許可が出る前に技能実習が終了することがあります。

このとき受入れ企業の担当者から「在留カードに申請中と書かれているのでそのまま働いてもらってよいのではないか」、「申請中の特例期間に入れば特定技能の仕事を始められるのではないか」と聞かれることがあります。

しかし、申請中の特例期間は単に日本に滞在できる期間を延ばす制度であり、特定技能として働く許可が先に与えられる制度ではありません。
また、特定技能への移行準備に使われる「特定活動(6月・就労可)」も、申請中であれば自動的に認められるものではありません。

この記事では技能実習の終了日と在留期限の違い、申請中の特例期間、移行準備の特定活動を分け、企業が就労開始日を判断するための確認点を整理します。
制度上の扱いは個別事情で変わることがあるため、実際の就労可否は在留カード、指定書、申請内容、技能実習計画の期間を基に確認してください。

「技能実習の終了日」と「在留期限」

最初に確認したいのは技能実習を終える日と在留カードに記載された在留期間の満了日です。
※この期限が同じ日になるとは限りません。

技能実習は認定された技能実習計画に基づいて行う活動ですので、在留カードの期限が残っていても認定された実習期間が終われば技能実習は終了します。
反対に在留期限が近づいていても申請中の特例期間により在留資格が一定期間継続する場合があります。

企業側は在留カードの期限だけでなく、次の資料を確認する必要があります。

  • 在留カードの在留資格と在留期限
  • 技能実習計画上の実習終了日
  • 特定技能への在留資格変更許可申請を受け付けられた日
  • 特定技能雇用契約に定めた就労開始予定日
  • 特定活動の許可を受けている場合は在留カードと指定書

「在留カードの期限が残っているから働ける」「雇用契約が始まったから働ける」と、端的に判断しないことが重要です。

特例期間は「特定技能で働ける期間」ではない

在留カードを持つ人が在留期限までに在留資格変更許可申請または在留期間更新許可申請を行い、期限までに結果が出なかった場合、原則として処分がされる日または従前の在留期間の満了日から2か月が経過する日のいずれか早い日まで引き続き日本に在留できます。
これが一般に「特例期間」と呼ばれる仕組みです。

ただし特例期間中に認められるのは申請した新しい在留資格の活動ではなく、従前の在留資格に基づく在留です。
技能実習から特定技能への変更申請であれば、許可が出るまでは「特定技能1号」の活動をすることはできません。

したがって変更申請を提出したことをもって、特定技能の業務を開始することはできません。
特例期間は審査中の滞在を適法に継続させるための制度であり、新しい就労資格の許可ではないと考えると分かりやすいでしょう。

技能実習が終わった後は申請中だけを理由に働かせない

技能実習計画に基づく実習が終わった後は特定技能への変更申請が審査中であっても、そのまま特定技能の仕事を始められるわけではありません。

同じ会社、同じ事業所、同じような仕事内容で働く場合でも、技能実習と特定技能は別の在留資格です。
技能実習では認定された計画に基づいて技能等を修得し、特定技能では人手不足分野の業務に従事します。
勤務先が変わらないことだけで、活動の根拠が同じになるわけではありません。

たとえば技能実習の終了日が9月30日、特定技能の変更申請日が9月20日、許可日が10月15日だったとします。
この場合、申請を9月中に済ませていても10月1日から当然に特定技能として働くことはできません。
特定技能の許可前に働ける別の在留資格・活動指定があるかを確認する必要があります。

移行準備の「特定活動(6月・就労可)」とは

特定技能1号への変更を希望しているものの、在留期間の満了日までに申請書類を揃えられないといった移行準備に時間を要する場合は「特定活動(6月・就労可)」への在留資格変更許可申請を検討できる制度があります。

この特定活動では許可された活動の範囲内で、特定技能1号として就労を予定している受入れ機関で働きながら移行準備を進めることが想定されています。
ただし、誰でも利用できるわけではありません。

出入国在留管理庁の案内では特定技能1号への変更申請を在留期限までに行うことが困難である合理的な理由があることなど、一定の条件が示されています。
外国人本人の要件、受入れ機関、雇用条件、予定する業務、書類を準備できない理由などを資料で説明し、変更許可を受ける必要があります。

また、許可された場合は在留カードだけでなく指定書の内容も確認します。
「特定活動」という名称だけでは就労できる仕事や勤務先を判断できないためです。

特例期間と特定活動の違い

二つの制度は在留を継続できる点だけを見ると似ていますが、法的な位置付けと就労の考え方は異なります。

確認項目申請中の特例期間特定活動(特定技能1号準備)
どのような状態か変更・更新申請の結果を待っている状態特定活動への変更許可を受けた状態
在留資格従前の在留資格が一定期間継続在留資格が「特定活動」に変更される
特定技能としての就労申請中だけを理由には開始できない指定書で認められた活動の範囲で就労可能
在留期間処分日または満了日から2か月後のいずれか早い方まで原則6月
確認資料在留カード、申請受付の事実、従前の活動内容在留カード、指定書、許可された活動内容
注意点滞在できることと新しい仕事ができることは別申請すれば必ず許可される制度ではない

名称の似た制度を口頭の説明だけで確認せず、在留カードと指定書を実際に見ることが大切です。

実習終了前に逆算して確認したい移行スケジュール


就労できない空白期間を避けるには技能実習が終わる直前に申請準備を始めるのではなく、実習終了日から逆算して進める必要があります。

時期主な確認事項
実習終了の3〜4か月前移行対象分野・業務区分、試験免除の可否、受入れ企業の要件を確認
2〜3か月前雇用条件、支援体制、必要書類、健康診断等の準備を進める
1〜2か月前自治体への協力確認書など、申請前に必要な手続を確認
申請前技能実習終了日、在留期限、特定技能の就労開始予定日を確認
申請後審査中の就労範囲と許可まで空白が生じる可能性を確認
許可後新しい在留カードを確認し、特定技能としての就労を開始

審査期間は申請時期、追加資料の有無、地方出入国在留管理局の状況などによって変わります。
「通常はこのくらいで許可されるだろう」と予想して入社日や勤務表を確定すると予定通り働けないことがあります。

書類が間に合わない可能性が見えた段階で、特定技能で申請するのか特定活動を検討するのか判断が必要になります。

受入れ企業が就労開始前に確認したいこと

受入れ企業は本人や登録支援機関から「申請中だから大丈夫」と聞いただけで就労を開始させず、根拠となる資料を確認しましょう。

1.在留カードの表裏

現在の在留資格、在留期限、就労制限の有無を確認します。
窓口で申請した場合は、在留カード裏面の申請欄に申請中であることが記載されることがあります。
オンライン申請では同じ表示にならないため、申請受付を示す資料も併せて確認します。

2.技能実習計画の終了日

最後に出勤した日ではなく、認定された技能実習計画上の期間を確認します。
年次有給休暇の消化や会社の締日だけで実習終了日を判断しないようにします。

3.申請した在留資格と申請日

「特定技能1号」への変更申請なのか、移行準備の「特定活動」への変更申請なのかを確認します。
申請中であることだけでは、申請内容までは分かりません。

4.特定活動の場合は指定書

特定活動の許可を受けている場合は、旅券に添付された指定書などで勤務先や認められた活動を確認します。
別の特定活動で在留している可能性もあるため、資格名だけで就労可否を決めないことが重要です。

5.許可前のシフトを組まない

特定技能の変更許可日が確定する前に、特定技能外国人としての勤務を前提としたシフトを組む場合注意が必要です。
研修、見学、手伝いなどの名称に変えても、実態が労務の提供であれば就労に当たる可能性があります。

まとめ

技能実習から特定技能への変更申請中に技能実習が終了しても「申請中だから」という理由だけで特定技能の仕事を始めることはできません。

申請中の特例期間は審査結果が出るまで従前の在留資格で日本に在留できる仕組みですが、特定技能の就労許可を先に与える制度ではなく、終了した技能実習を自由に延長できる制度でもありません。

一方、移行準備の「特定活動(6月・就労可)」は一定の条件を満たして変更許可を受けた場合に、指定された範囲で働きながら特定技能への準備を進める在留資格です。
特例期間とは別の制度であり、自動的に付与されるものではありません。

受入れ企業は在留カードの期限だけでなく、技能実習計画の終了日、申請した在留資格、申請日、特定活動の指定書、特定技能の許可日を時系列で確認しましょう。
実習終了から許可までの空白を見越して準備を始めることが意図しない不法就労を防ぐうえで重要です。

参考情報

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所