はじめに

親の仕事の都合で子どものころに来日し、「家族滞在」という在留資格で日本の高校に通う生徒は少なくありません。
「家族滞在」は日本で働く親などに養われて暮らすための在留資格です。
そのため、高校を卒業して正社員として働くには在留資格を変える手続が必要になります。

この記事では出入国在留管理庁(入管庁)の公表資料をもとに、「定住者」と「特定活動」のどちらに変えるのか、内定から入社までに何をするのかを本人・家族と採用する会社の両方の目線で整理します。
※内容は2026年10月29日時点で確認したものです。

家族滞在のままだと

「家族滞在」は本来働くための在留資格ではありません。
そのため、アルバイトをするためには「資格外活動許可」が必要で、その範囲も原則として1週につき28時間以内です。

高校を卒業しただけでは在留資格は変わらず、フルタイムで働くには入管庁に在留資格の変更を申請し、許可を受ける必要があります。

ここで問題になるのが学歴です。
会社員向けの代表的な在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、原則として大学卒業などの学歴や実務経験が求められます。
高校卒業ではこの条件を満たしません。
そこで入管庁は、親に同伴して子どものころに来日し、日本の高校を卒業した人について、一定の条件で「定住者」または「特定活動」への変更を認める取扱いを公表しています。

なお、この取扱いは法律の条文や告示に書かれたものではなく、入管庁の運用として公表されているものです(いわゆる「告示外」の取扱い)。
条件を満たしていても個別に審査されるため、必ず許可されるとは言えません。

定住と特定活動の分かれ道

比べる点定住者特定活動
日本の学歴日本の小学校・中学校を卒業(義務教育を修了)し、高校を卒業または卒業見込み日本の高校を卒業または卒業見込み
高校に編入した場合―卒業に加えて、日本語能力試験N2以上、またはBJTビジネス日本語能力テスト400点以上が必要
身元保証身元保証書を提出扶養者(親など)が身元保証人として日本に在留していること
申請書の様式在留資格変更許可申請書(様式T・定住者)在留資格変更許可申請書(様式U・その他)
働き方在留資格による仕事の制限はない本書(審査要領を引用)は風俗営業などを除き職種の限定はないと説明。入管庁の公開ページには明記なし

ここでいう「高校」には、定時制・通信制、高等専門学校、大学入学資格が認められる指定専修学校の高等課程も含まれます。
「小学校・中学校」には、夜間中学や義務教育学校、特別支援学校も含まれます。

たとえば、6歳で来日して小学校・中学校を卒業し、高校に進んだ生徒は「定住者」の対象になりえます。
14歳で来日し、日本の中学校を途中から卒業した生徒は、小学校を日本で卒業していなければ「特定活動」の対象です。
16歳で来日して高校に編入した場合は、「特定活動」でも日本語能力の証明が必要になります。

「特定活動」は親などの扶養者が身元保証人として日本にいることが条件なので、親の帰国予定がある家庭は早めに確認が必要です。

共通する条件

どちらの在留資格でも次の4つをすべて満たす必要があります。

  • 入国したときに18歳未満だった(17歳までに入国した)
  • 入国してから引き続き「家族滞在」で在留している
  • 就職先が決まっている(内定も含む)
  • 住居地の届出など、入管法上の義務を守っている

2つ目の「家族滞在」については、「留学」など別の在留資格になっていても、家族滞在の条件に当てはまる人は対象とされています。
また、在留中に「単純出国」(再入国許可やみなし再入国許可を使わずに出国し、在留資格を失うこと)をした人は対象外です。

「就職先が決まっている」は、週の労働時間が資格外活動の範囲(週に28時間)を超えて働く場合が対象です。
大学に進学してアルバイトを続けるだけなら、この変更の対象にはなりません。

内定から入社まで

申請は「卒業見込み」の段階からできます。
卒業証明書は許可が出て新しい在留カードを受け取るときに提出します。

高卒者の採用には、国と学校、経済団体などで決めた全国共通の日程があります。大まかな流れを整理すると以下のようになります。

時期高卒採用の流れ在留資格の手続
6月1日〜ハローワークが高卒求人を受付本人・家族が入国時の年齢や日本の学歴を確認
9月5日〜学校から企業へ応募書類を提出履歴書や卒業証明書(小・中学校)の準備
9月16日〜採用選考・内定会社から雇用契約書・内定通知書などを受け取る
内定後〜卒業前―住所地を管轄する地方出入国在留管理局へ変更を申請
3月(卒業)―許可時に高校の卒業証書の写しまたは卒業証明書を提出し、新しい在留カードを受領
4月(入社)勤務開始新しい在留カードで在留資格を確認

内定が出たら早めに書類を揃え、管轄の入管に確認するのが安全です。

許可が出る前にフルタイムで働き始めると、資格外活動の範囲を超えた就労になるおそれがあります。入社日は「新しい在留カードを受け取った後」に設定してください。

採用する会社が確認することは?

会社の役割は申請に必要な雇用関係の書類を正確に出すことと、入社前に在留カードを確認することです。

  • 内定通知書または雇用契約書に、雇用期間・雇用形態・給与を書いたか(書いていないときは求人票なども渡す)
  • 週の所定労働時間が28時間を超える働き方か(対象になる前提)
  • 入社日を許可と在留カードの受領後にできるか
  • 入社前に新しい在留カードの在留資格(定住者・特定活動)と在留期間を確認したか
  • 「特定活動」の場合、パスポートに貼られた指定書(できる活動を書いた紙)も確認したか
  • 外国人雇用状況の届出をハローワークに出したか

最後の「外国人雇用状況の届出」は、「定住者」でも「特定活動」でも必要です。
雇用保険に入る人は、雇用保険の資格取得届とあわせて雇い入れた翌月10日までに届け出ます。入らない人は翌月の末日までです。

なお、「定住者」や今回の「特定活動」は、「技術・人文知識・国際業務」のように特定の会社との契約を前提にした在留資格ではありません。
本人が入管に出す「所属機関に関する届出」などの扱いも異なるため、転職などの場面では個別に確認してください。

特定活動から定住者へ


入管庁は令和6年に「特定活動」から「定住者」へ変更するための条件を追記しました。

入管庁の案内資料では次の条件を満たすと「定住者」への変更の対象になるとされています。

  • 日本の高校卒業以上の学歴がある
  • 就労を目的とする「特定活動」または就労資格(「技能実習」を除く)で、5年以上在留している
  • 就職先が決まっている(内定も含む)
  • 本人が自分の収入で生活できる(独立生計維持能力)
  • 入管法上の届出などの義務を守っている

「5年」には、その後に就職した場合、大学や専門学校(日本語教育だけを受ける場合を除く)などで学んだ期間も算入できるとされています。

よくある質問

Q1. 大学や専門学校に進学した場合、この取扱いは使えなくなりますか?

使えなくなるわけではありません。
条件を満たす人が大学等を卒業して就職するときは「家族滞在」や「留学」から「定住者」「特定活動」への変更が認められる一方で、「留学」に変えた後で就職がうまくいかなかった場合、原則として「家族滞在」には戻れないことをお覚えておく必要があります。
不安であれば進学前に入管へ確認し、在留資格を変えるかどうかを慎重に判断して下さい。

Q2. 18歳以上で来日したなど、条件に当てはまらない場合は?

その場合は「特定技能」(分野ごとの技能試験などが必要)のように、別の在留資格の条件を満たせるかを個別に検討することになります。

Q3. 高校在学中のアルバイト先にそのまま就職できますか?

就職先になること自体は問題ありません。
ただし、許可が出るまではこれまでどおり週に28時間以内です。

まとめ

「家族滞在」で日本の高校を卒業する人が正社員として働くためには在留資格の変更が必要です。

日本で小学校・中学校・高校を卒業した人は「定住者」、高校を卒業したが小学校からの学歴が日本にない人は「特定活動」が対象で、どちらも「17歳までに入国」「家族滞在で在留を続けている」「内定がある」ことが前提です。

  • 「特定活動」は親などの扶養者が身元保証人として日本にいることが条件。高校から編入した人はN2程度の日本語能力の証明も必要です。
  • 申請は卒業見込みの段階からできる。内定が出たら早めに準備し、管轄の入管へ確認してください。
  • 会社は許可と新しい在留カードの受領を待ってからフルタイムの勤務を始めてもらい、外国人雇用状況の届出も忘れずに出します。
  • 「特定活動」で働き始めた後も、5年以上の在留や自分の収入での生活などの条件を満たせば「定住者」への変更を申請できる場合があります。

入国の経緯や学歴に迷う点があれば、申請前に入管庁の公開資料と照らして確認しておくと安心です。

※本記事の情報は2026年10月29日に公式資料で確認した内容です。

参考情報

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所