はじめに

「帰化は日本に5年住めば申請できる」と知っている方は多いと思います。たしかに法律上は「引き続き5年以上日本に住所を有すること」が要件です。

ところが2026年に入り、政府は帰化の審査で「原則として10年以上在留していること」を求める方向を示しました。
その理由は永住許可(原則10年)との「不整合」を解消するという点が挙げられます。

この記事では在日7~9年程度の方を想定し、次の事項を分けて整理します。

  • 法律で決まっていること
  • 政府・法務省の公式資料に書かれていること
  • 報道や民間の解説で伝えられていること

なお帰化の相談は住所地を管轄する法務局で行います。

法律上の居住要件

現時点で国籍法の条文に変更はありません。
一般的な帰化(普通帰化)の居住要件は「引き続き5年以上日本に住所を有すること」(国籍法第5条)です。

法務省や東京法務局でも、居住要件を「帰化の申請をする時まで引き続き5年以上日本に住んでいること」と説明しています。
ここでいう「引き続き」とは、日本での生活が途切れずに住んでいることを意味します。年の大半を海外で生活している場合は注意が必要です。
また、ただ住んでいれば良いというわけではなく、適正に在留しているかも厳しく審査されます。

日本人の配偶者などは、居住要件が緩和された「簡易帰化」(国籍法第6条~第8条)という制度もあります。

審査上の居住要件

法律上は5年のままですが、審査上では「原則10年以上の居住」が求められるようになりました。
これから申請する方は「5年たったから申請すれば通る」とは考えず、改めて対応策を確認する必要があります。

帰化は条件を満たせば必ず許可される制度ではなく、許可するかどうかは法務大臣の裁量によるところが大きいです。

2026年1月23日に政府の関係閣僚会議が決めた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(以下「総合的対応策」)では、この裁量の中で「日本社会に融和していること」を審査する際、「原則として10年以上在留し、融和していることを必要とする」など、帰化の厳格化を進めるとしています。
法務省の帰化のページにも、日本社会への融和の一つとして「10年以上在留していること」が書かれています。

なぜ帰化が厳しくなったのか?

帰化が厳しくなった一番の理由に、永住より帰化のほうが短い在留年数で申請できるという「逆転現象」が挙げられます。

永住許可は原則として日本に10年以上在留していることが必要な一方、帰化は法律上5年の在留で申請が可能です。

ー永住帰化
目的外国籍のまま在留期限のない在留資格を取得元の国籍を離脱し、日本国籍を取得
申請先地方出入国在留管理局法務局
在留年数原則10年以上(永住許可に関するガイドライン)法律上は5年以上。審査上は原則10年以上を要する。

総合的対応策はこの差について「不整合であるとの指摘がある」と書き、永住許可の審査との整合性を理由に帰化の審査を見直すとしています。
つまり、帰化の審査は永住の審査とつり合いを取る方向で動いています。この点が次章の「今後の可能性」につながります。

永住の厳格化に合わせて帰化も厳格化?

帰化の見直しは今後も続く可能性が大いにあります。
永住審査では居住10年の他にも収入や年金などの見直しが重ねられており、帰化についても政府が「引き続き検討する」と書いているからです。

まず、永住で既に決まっている点を時系列で並べます。

  1. 2026年1月23日:総合的対応策で永住許可の厳格化と帰化の厳格化がどちらも示される
  2. 2026年2月24日:「永住許可に関するガイドライン」改訂。税金や年金・医療保険の保険料を申請時に払い終えていても、本来の納期を過ぎていれば原則として消極的に評価されると明記
  3. 2026年8月4日:法務大臣が更なるガイドライン改定案を発表。世帯収入が日本人世帯の平均を上回る水準かどうか、将来受け取れる年金の見込み額などを考慮する内容
  4. 2026年10月1日:収入に関する基準を適用する予定と説明(8月4日の法務大臣会見。改定案の段階の説明のため、確定した内容は入管庁の公表資料で確認が必要)
  5. 2027年4月1日:改定後のガイドライン全体の運用開始(予定)と、永住者の在留資格の取消しに関するガイドラインの施行(予定)

そして総合的対応策は今後の課題として次の2つを並べて書いています。

  • 永住:独立した生計を営めるか(独立生計要件)や、日本の利益に合うか(国益要件)の見直し、日本語や制度を学ぶプログラムの受講を条件にすることなどを検討する。
  • 帰化:帰化を申請する人が将来にわたって安定した生活を営めることなど、帰化の要件について引き続き審査の在り方を検討する。

ここから先は公開資料をもとにした執筆上の見立てです。帰化の厳格化は「永住との整合性」を理由に始まりました。
そのため、永住で厳しくなった点(税金や保険料を期限どおりに払っているか、収入の水準、年金の見込み、日本語の学習など)が、帰化の「将来にわたる安定した生活」の審査にも取り入れられていく可能性は十分あると考えられます。

ただし、帰化に永住と同じ収入基準や日本語の条件を導入するという公式の決定は、現時点ではありません(2026年10月22日時点で確認できた範囲)。

在日7~9年の人はどうする?状況別の考え方

在日10年未満の方が今すぐ申請すべきかは一律に判断できません。在留年数やその人が置かれた状況をもとに個別に判断していくことになります。

状況考え方確認すること
在日5~9年(普通帰化)法律上は申請できるが、審査では「原則10年」に届いていない不許可になり得る可能性を考慮し、申請するか判断
在日10年以上居住要件は満たしている。税金・年金・健康保険を期限どおりに払ってきたか、交通違反歴などはない、他の要件を確認。
日本人の配偶者など(簡易帰化)法律上、居住要件が緩和される「原則10年」の審査がどう扱われるかは公式資料で未確認。法務局で確認が安全。
永住と帰化で迷っているどちらも審査上「原則10年」を求められ、年数だけでは差がつきにくくなった。国籍を変えるか(母国の国籍を失うことを含めて)という、年数以外の点で考える

在日7~9年の方は「10年になるまで何もしない」のではなく、「10年になったときにすぐ申請できる状態を今から作る」と考えると残りの年数を有効に使えます。
税金や保険料の支払い遅滞などは後から直せないものだからです。

申請前チェックリスト

帰化も永住も、「これまでの在留歴」が見られます。今から備えられるのは次のような点です。

  • 日本に住んでいる年数を、在留カードやパスポートで数え直した(長い出国がある場合は、「引き続き」住んでいたといえるかを確認)
  • 住民税・所得税を期限内に払ってきたか確認した(会社員は給与から天引きされているかも)
  • 年金と健康保険の保険料に、未納や遅れがないか確認した(転職の間の空白期間は特に注意)
  • 交通違反履歴がないか確認した
  • 家族の状況(配偶者・子どもの国籍や在留資格)を整理した
  • 母国の国籍を失うことについて家族と話し合った
  • 担当の法務局に電話で相談の予約をした

まとめ

帰化の居住要件は法律上は今も「引き続き5年以上(普通帰化)」です。
しかし、審査の現場では永住との整合性を理由に「原則として10年以上の在留」が求められるようになっており、「5年で申請できる」という理解のまま準備するのは危険です。

さらに、永住は2026年から2027年にかけて、収入・年金・公的義務の履行などで段階的に厳しくなっています。
政府は帰化についても「引き続き審査の在り方を検討する」としており、永住同様、今後さらに厳しくなる可能性があります。

在日7~9年の方は税金・年金・健康保険を期限どおりに払い続けることが帰化でも永住でも共通して大切です。
永住や帰化は法務大臣の裁量で大きく左右される申請であり、法律やガイドラインの要件に適合していれば100%許可されるものではありません。
いきなり申請するのではなく、まずは専門家や法務局等に確認すると良いでしょう。

参考情報

情報確認日:2026年10月22日。いずれも同日に内容を確認したページです。

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所