はじめに

特定技能外国人が退職するとき、雇用の終了と同時に問題になりやすいのが住まいです。
会社が借りている寮や社宅に住んでいる場合、本人から「次の会社が決まるまでこのまま住みたい」と希望されることがあります。

会社としても退職した翌日から退去を求めれば外国人が住居を失うおそれがあります。
一方で、退職後も期限を決めずに住み続けてもらうと、家賃、水道光熱費、部屋の管理、次の入居者などの問題が発生します。

この問題を整理するときは在留資格、転職支援、寮の使用契約を一つの問題として扱わないことが大切です。
退職後も日本に在留できることと会社の寮に住み続けられることは別の問題です。

この記事では特定技能外国人が退職後も会社の寮へ住みたい場合について、受入れ企業と登録支援機関が確認したい事項を順番に整理します。

退職したら直ちに帰国・退寮するとは限らない

特定技能外国人が退職しても、その日に在留資格や在留期間が自動的に消滅するわけではありません。
出入国在留管理庁は特定技能雇用契約が終了した場合でも直ちに帰国することになるわけではなく、転職によって新たな特定技能雇用契約を締結し、在留資格変更許可を受けることで引き続き在留できると説明しています。

ただし、在留カードに記載された期限まで何もせず自由に滞在できるという意味ではありません。
特定技能に該当する活動を正当な理由なく3か月以上行っていない場合は在留資格取消手続の対象となる可能性があります。
転職活動をしている場合でも応募記録や面接連絡など、活動状況が分かる資料を残しておくことが重要です。

また、転職先が決まっても新しい会社で特定技能外国人として働き始めるには原則としてその会社を所属機関とする在留資格変更許可が必要です。
退職後に在留期間が残っているという理由だけで、転職先で直ちに働けるわけではありません。

一方、会社の寮へ住み続けられるかどうかは在留カードの期限だけで決まりません。
会社と本人の間の寮使用契約、会社と物件所有者との賃貸借契約、就業規則や社宅規程などを確認する必要があります。

最初に寮の契約関係を確認する

「会社の寮」と呼ばれていても、実際の契約関係は同じではありません。主に次の三つが考えられます。

住居の形態主な確認事項
会社が所有する寮・社宅社宅規程、使用契約、退職後の使用期限、家賃、鍵の返却
会社が借り上げて本人へ提供貸主との賃貸借契約、転貸の可否、退職後も入居させられるか、解約予告期間
本人が賃借人となり会社等が支援退職後も本人の賃貸借契約が続くか、保証人・緊急連絡先、家賃の支払方法

会社所有の寮であっても、「退職日をもって使用資格を失う」と規程に定められている場合もあれば、退職後一定期間の入居を認める規程になっている場合もあります。

借上社宅の場合は会社が本人の継続入居を認めたくても物件所有者との契約上、退職者を住まわせることが認められていない可能性があります。
会社と外国人本人だけで決めず、必要に応じて貸主や管理会社への確認も必要です。

「特定技能だから住める・住めない」と判断する前に、誰が物件を借り、誰が誰に部屋を使用させているのかを確認してください。

退職後の住居支援は「同じ寮に住ませる義務」とは限らない

1号特定技能外国人に対する義務的支援には適切な住居を確保するための支援が含まれます。
会社が社宅を提供するほか、本人が物件を借りるための情報提供、不動産仲介事業者の紹介、必要に応じた住居探しへの同行などが考えられます。

出入国在留管理庁の運用要領では特定技能雇用契約の解除・終了後、次の受入れ先が決まるまでに住居確保の必要が生じた場合、従前の特定技能所属機関等が住居確保を支援し、本人の日常生活の安定・継続性に支障が生じないよう配慮することが望ましいとされています。

もっともこの取扱いは任意的支援として示されています。
前の会社に対し、退職後も同じ寮を無期限・無償で提供することまで一律に義務付けたものではありません。

同じ寮を一定期間使わせることが難しい場合でも次の住居に関する情報を提供する、転職先と引っ越し時期を調整する、自治体の外国人相談窓口を案内するなど、住居を突然失わないための対応は検討できます。

なお、会社都合など本人の責めに帰すべき事情によらず雇用契約を解除する場合には、別途、転職先の情報提供、推薦状の作成、求職活動のための有給休暇の付与などの転職支援が必要になります。
自己都合退職と会社都合の契約終了では求められる対応が異なります。

退職後の家賃は書面で改めて決める

在職中の寮費を給与から控除していた場合、退職後は給与そのものがなくなるため、同じ方法では回収できません。
退職後も入居を認めるのであれば、少なくとも次の事項を本人が理解できる言語を交えて書面にしておくと安心です。

  • 入居を認める期間
  • 1か月または日割りの家賃
  • 水道光熱費、インターネット代などの負担者
  • 支払日と支払方法
  • 部屋や備品を破損した場合の取扱い
  • 転職先や新居が決まった場合の連絡方法
  • 退去日、鍵の返却、立会い方法
  • 期間を延長するときの手続

特定技能外国人へ会社が住居を提供する場合、出入国在留管理庁の運用要領では、住居費は実費に相当するなど適正な額とし、会社が経済的利益を得ないことが求められています。
借上物件の場合、借上げに要する費用を入居者数で除した額以内とすることなどが示されています。

ただし、雇用契約終了後の使用関係まで在職中の雇用条件書だけで処理できるとは限りません。
退職後の家賃を変更する場合は寮の契約や社宅規程との整合性を確認し、本人へ金額と内訳を説明した上で合意を残すことが重要です。

また、在職中に寮費を給与から控除する場合、法令上認められた控除を除き原則として労使協定が必要です。
退職時の最終給与から退職後の家賃や将来発生する可能性のある費用を会社が一方的に差し引くことは避け、請求内容と支払方法を分けて整理する必要があります。

退去日は「退職日と同日」と決めつけない

退去時期は寮使用契約、社宅規程、賃貸借契約、退職理由、次の住居の状況を踏まえて決めます。
特定技能制度には会社寮に共通する「退職後○日以内」という一律の退去期限は示されていません。

そのため会社が独自に30日などの猶予期間を設けることは考えられますが、法律上の共通期限と説明してはいけません。

実務上は退職が決まった段階で次の順番に確認すると整理しやすくなります。

  1. 雇用契約の終了日を確認する
  2. 寮規程・使用契約上の退去期限を確認する
  3. 本人の転職活動と転居予定を確認する
  4. 会社が継続入居を認められる期間を検討する
  5. 家賃や水道光熱費を計算する
  6. 双方で退去予定日を書面に残す

次の入居者が決まっている、会社と貸主との契約が終了するなど、継続入居が難しい事情がある場合は、その事情も早めに本人へ説明します。
本人が理解できないまま退去日だけを通知すると転居準備が間に合わず、住居地の届出にも影響するおそれがあります。

退去日を決めるときは会社側の都合だけでなく、新居を探すために必要な期間と契約上の根拠を分けて確認することが大切です。

退職・転職・引っ越しに伴う届出を分けて考える

退職後の寮問題では住居だけに注意が向き、入管への届出を忘れることがあります。
会社と本人の手続を分けて整理してください。

会社側が確認する届出

特定技能外国人が退職した場合、受入れ企業は特定技能雇用契約の終了に関する届出を契約終了日から14日以内に行う必要があります。

また、実際の退職より前に受入れの継続が困難となった場合は、その原因となる事由が生じた時点から14日以内に受入れ困難に関する届出が必要になる場合があります。
退職日だけを基準に判断しない点に注意が必要です。

本人が確認する手続

特定技能外国人が転職して所属機関を変更する場合、原則として新しい受入れ機関を前提とした在留資格変更許可申請が必要です。
許可を受ける前から新しい会社で特定技能の仕事を始められる訳ではありません。

寮から別の住所へ転居した場合、新しい住居地へ移転した日から14日以内に市区町村の窓口で住居地変更の届出を行います。
寮を出たものの住民票だけを旧住所に残すといった状態は避けなければなりません。

退職前後の確認チェックリスト

退職後の住居をめぐるトラブルを防ぐには、退職が決まってから慌てて考えるのではなく、雇用終了と住居終了を別々の問題として整理することが大切です。

退職日が決まったとき

  • 退職理由が本人都合か会社都合かを確認した
  • 特定技能雇用契約の終了日を確認した
  • 受入れ困難の届出が先に必要か確認した
  • 寮の所有者と賃借人を確認した
  • 社宅規程、寮使用契約、賃貸借契約を確認した
  • 本人の在留期限と転職活動の状況を確認した

継続入居を認めるとき

  • 退去予定日を決めた
  • 退職後の家賃と日割計算を決めた
  • 水道光熱費などの負担を決めた
  • 支払方法を決めた
  • 本人が理解できる方法で説明した
  • 合意内容を書面に残した
  • 貸主や管理会社への確認が必要か

転居・転職が決まったとき

  • 退去日と引っ越し日を確認した
  • 鍵、備品、室内状況を確認した
  • 住居地変更の届出を案内した
  • 新しい受入れ機関への在留資格変更手続を確認した
  • 前の会社と登録支援機関が行う届出を確認した

まとめ

特定技能外国人が退職しても、直ちに帰国しなければならないとは限りません。
しかし、在留期間が残っていることと前の会社の寮を使い続けられることは別の問題です。

退職後も同じ寮への入居を認められるかは会社所有、借上社宅、本人契約などの住居形態と、寮使用契約・社宅規程・賃貸借契約によって変わります。

出入国在留管理庁は雇用契約の終了後、次の受入れ先が決まるまで住居確保が必要になった場合、以前の受入れ機関等が生活の安定に配慮することが望ましいとしています。
ただし、これは前の会社が同じ寮を無期限または無償で提供し続ける義務を意味するものではありません。

継続入居を認める場合は退去日、家賃、水道光熱費、支払方法、鍵の返却などを改めて書面で整理します。
同時に雇用契約終了の届出、受入れ困難の届出、転職に伴う在留資格変更、引っ越し後の住居地変更を混同しないことが重要です。

参考情報

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所