はじめに

特定技能1号で働ける期間は原則として通算5年までです。
そのため5年の満了を前に特定技能2号を目指していた外国人が試験に不合格になると、本人だけでなく雇用を続けたい会社も大きな不安を抱えることになります。

このような場面で「合格点の8割を取れていれば1年間自動的に延長される」と説明されることがあります。
しかしこの理解は正確ではありません。

出入国在留管理庁は特定技能2号評価試験等に不合格となった特定技能1号外国人について、一定の要件を満たし、通算5年を超えて在留することに相当の理由があると認められる場合に、通算6年を上限として在留を認める取扱いを案内しています。

試験で8割相当の得点を取ることは重要な要件の一つですが、それだけで6年目の在留が保証されるわけではありません。

この記事では制度の対象、8割要件の考え方、本人と会社に求められる準備、申請時期を順番に整理します。
分野によって対象試験や追加要件が異なるため、外食業の取扱いも具体例として取り上げます。

特定技能1号の「通算5年」と6年目の取扱い

特定技能1号は原則として通算5年という在留期間の上限があります。
転職して会社が変わっても同じ特定技能1号として在留した期間が最初から数え直されるわけではありません。

あくまで特定技能2号への移行を目指して試験を受けたものの、わずかに合格へ届かなかった人について一定の条件のもとで通算5年を超える在留を個別に審査するものです。

認められる場合でも上限は通算6年です。
「5年が終われば全員にもう1年が追加される」「不合格通知を見せれば自動的に延長できる」という仕組みではありません。
また、6年目が終わった後も特定技能1号のまま働き続けられる制度でもありません。

この期間は次の受験で特定技能2号への移行を目指すための限られた期間と捉える必要があります。
試験に合格した場合は別途、特定技能2号への在留資格変更許可申請を行います。

「最長1年の猶予」ではあっても、「無条件の1年延長」ではありません。許可の可否は在留期間更新許可申請の審査で判断されます。

不合格なら誰でも対象になるわけではない

制度を検討する最初の段階では本人が受験した試験が対象になっているかを確認します。
特定技能2号での受入れが認められている分野であっても、受験した試験の種類、受験日または結果通知書の発行日などに分野別の条件が設けられることがあります。

主な確認事項は次のとおりです。

確認項目確認する内容
対象分野特定技能2号への移行が認められている分野か
対象試験分野別の案内で本取扱いの対象として示された試験等か
試験結果合格基準点に対して必要な得点を満たしているか
受験時期対象となる受験日・結果通知書の発行日などを満たしているか
2号の他の要件実務経験、日本語能力、指導・管理経験など、分野別要件の確認が必要か
通算期間特定技能1号として在留した期間を正確に計算できているか

複数の試験や検定が2号移行に関係する分野では一つの結果だけを見て判断できないことがあります。
試験結果通知書の名称や発行元が似ていても、対象外の試験である可能性もあります。

そのため会社の担当者は「本人が2号試験を受けた」という口頭の説明だけでなく、結果通知書の原本または写しを確認し、分野を所管する省庁と出入国在留管理庁の最新資料を照合することが大切です。

確認するのは不合格という事実だけではなく、「どの分野の、どの試験を、いつ受け、何点だったか」です。

「合格基準点の8割以上」は何を意味するのか

この取扱いでよく使われる「8割」は問題全体の80%を正解したという意味とは限りません。
基本となるのは対象となる試験等の合格基準点に対して8割以上の得点を取得しているかどうかです。

例えば仮に合格基準点が100点満点中65点の試験であれば、その8割は52点です。
ただし、これは計算方法を理解するための例にすぎません。
実際には試験結果通知書の表示方法や分野別資料に従って確認します。

試験によっては得点そのものが通知書に表示されず、対象者向けのスコアレポートや証明資料が別に用意される場合があります。
また、実技と学科、技能試験と日本語試験など、複数の要素が関係する分野もあります。

「自己採点では8割だった」「同じ会場の受験者から点数を聞いた」といった情報だけで要件を満たすとは判断できません。
申請で使用できる公的な結果通知書や証明資料が必要です。

8割要件は「正答率80%」と決めつけず、合格基準点との関係を分野別の公式資料と結果通知書で確認します。

本人と受入れ会社に求められる準備

点数の要件を満たしていても、本人と会社に再挑戦へ向けた具体的な準備がなければ、この取扱いの趣旨には合いません。

本人については特定技能2号評価試験等の合格に向けて努力し、再び試験を受ける意思があることが前提になります。
合格した場合は速やかに特定技能2号への変更申請を行い、再受験しても必要な要件を満たせない場合には帰国することなどについて誓約を求められる場合があります。

受入れ会社についても単に「人手不足だから残ってほしい」という事情だけでは足りません。
引き続き雇用する意思に加え、本人が試験へ合格できるよう指導・研修・学習支援などを行える体制が求められます。

会社が準備する支援は形式だけではなく実行できる内容にします。例えば次のような事項を具体化します。

  • 次回試験の予定と申込期限を確認する
  • 受験に必要な実務経験や証明書を整理する
  • 学習時間をどのように確保するか決める
  • 教材、講座、模擬試験などの利用方法を決める
  • 指導する責任者と進捗確認の時期を決める
  • 受験料や交通費を誰が負担するか確認する
  • 合格後に担当させる業務や役割を整理する

試験直前になって初めて研修記録を作るのではなく、いつ、誰が、何を支援したかを日頃から記録しておくと支援の実態を説明しやすくなります。

会社に必要なのは継続雇用の意思だけではなく、次の合格に向けた指導・研修・支援を実際に行える体制です。

分野別条件を必ず確認する|外食業の例

6年目の取扱いは全分野で同じ書類・同じ条件が適用されるとは限りません。
対象となる試験や結果通知書、追加の能力要件は分野別の資料で確認する必要があります。

外食業について、農林水産省は外食業特定技能2号評価試験で合格基準点の8割以上を取得するなどの要件を満たし、5年を超えて在留することに相当の理由がある場合、最長1年間、通算在留期間を超えて在留できると案内しています。

また、外食業では発行日が2025年6月30日以降の対象試験結果通知書がこの取扱いの対象とされています。
それより前の日付の結果通知書は対象にならないと明記されています。

さらに外食業では日本語能力試験N3以上の取得も必要と案内されています。
2025年10月17日以降はN3以上についても合格基準点の8割以上の得点を取得している場合に対象となり得る旨が示されています。

このように「技能試験で8割に届いた」という一つの事実だけでは分野別の要件を満たしたか判断できません。
建設、農業、外食業など、本人が従事する分野の最新案内を個別に確認します。

他分野で認められた条件や書類をそのまま自社の分野へ当てはめないことが重要です。

満了前の申請時期と会社の確認手順


出入国在留管理庁はこの取扱いを希望する場合、特定技能1号の通算5年の満了日の3か月前から満了日までに試験結果などの疎明資料を添えて在留諸申請を行うよう案内しています。

ただし、満了日の3か月前になってから準備を始めるのでは間に合わないおそれがあります。
対象試験の結果が出る時期、結果通知書の発行、次回試験の日程、会社の支援計画、通常の更新書類の準備を逆算しておく必要があります。

満了前の確認手順

  1. 在留カードだけでなく、特定技能1号の通算在留期間を確認する
  2. 2号移行に必要な試験・実務経験などを分野別資料で確認する
  3. 結果通知書で試験名、受験日・発行日、得点を確認する
  4. 本人の再受験意思と次回の受験予定を確認する
  5. 会社の継続雇用意思と具体的な支援内容を決める
  6. 誓約書、申立書、支援内容を示す資料など、分野別の必要資料をそろえる
  7. 通算5年の満了3か月前から満了日までに申請する

通常の在留期間更新許可申請で必要となる資料に加えて、試験結果、本人の誓約、会社の雇用継続意思、研修・支援体制などを示す資料が関係します。
具体的な提出書類は申請時点の入管庁資料と分野別資料で確認してください。

また、申請を行っただけで現在の許可内容を超える活動が新たに認められるわけではありません。
申請中の就労可否や在留期限後の扱いは在留カード裏面の申請中表示、現在の在留資格、申請内容などを確認して判断します。

「3か月前から申請できる」と「3か月前から準備すればよい」は別です。受験と資料準備はそれより前から逆算します。

まとめ

特定技能2号評価試験等に不合格となっても、一定の要件を満たす特定技能1号外国人については通算5年を超えて在留できる場合があります。
ただし、これは不合格者へ一律に与えられる延長ではなく、通算6年を上限とする個別審査の取扱いです。

確認すべき主な点は次のとおりです。

  • 本人が特定技能2号への移行が認められている分野で働いているか
  • 受験した試験等が分野別に指定された対象になっているか
  • 合格基準点に対して8割以上の得点を取得しているか
  • 受験日や結果通知書の発行日など、分野別条件を満たしているか
  • 本人に再受験と合格へ向けた意思があるか
  • 会社に継続雇用の意思と指導・研修・支援体制があるか
  • 通算5年の満了3か月前から満了日までに必要な申請を行えるか

最も避けたいのは「8割だったから大丈夫」と考えて、対象試験や申請時期、会社の支援資料を確認しないまま5年の満了を迎えることです。

まず通算在留期間を正確に計算し、本人の結果通知書と分野別の最新資料を照合します。
そのうえで次回試験までの学習・受験計画と会社の支援内容を具体化し、満了日から逆算して申請準備を進めることが重要です。

なお、分野ごとの対象試験、結果通知書、追加要件や提出資料は変更されることがありますのでご注意ください。

参考情報

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所