はじめに

特定技能1号の外国人が仕事中にけがをし、数か月にわたって働けなくなった場合、受入れ企業では複数の点を確認する必要があります。

労災保険の手続を進めるだけでなく、特定技能の活動を1か月以上行えない場合の届出や、原則5年とされる通算在留期間の計算も確認しなければなりません。

ここで注意したいのは、労災で休業したからといって現在の在留期限が自動的に延びたり、休業期間が何の手続もなく5年の計算から外れたりするわけではないことです。

「労災保険の手続」「1か月以上活動できないことの届出」「通算在留期間に関する在留申請」は別々に整理する必要があります。

この記事では特定技能1号外国人が労災で長期休業した場面を中心に、通常の病気・けがによる休業との違いを説明します。

外国人であっても労災保険の対象になる

特定技能外国人も日本国内で労働者として雇用されている以上、原則として日本人と同様に労災保険の対象になります。
国籍を理由に労災保険の手続や労働条件について不利に扱うことはできません。

仕事中の事故だけでなく、通勤途中の事故が労災保険の対象となる可能性もあります。
ただし、事故が起きたというだけで自動的に認定されるわけではなく、個別具体的な状況に基づき労働基準監督署が判断します。

受入れ企業では負傷した外国人の治療を優先しながら事故の発生日時、場所、作業内容、目撃者、医療機関の受診状況などを記録します。
本人が理解できる言語や方法で、休業中の給与・補償や今後の手続を説明することも大切です。

労災かどうかを会社だけの判断で決めたり、本人に健康保険を使うよう一方的に要求したりせずに、事実関係を整理して正式な手続につなげます。

特定技能1号の「5年」と休業期間の関係

特定技能1号で在留できる期間は原則として通算5年以内です。
一般的には特定技能1号の在留中に働いていなかった期間や、再入国許可を受けて出国していた期間も通算期間に含まれます。

一方、出入国在留管理庁は一定の病気・けがによる休業期間について、所定の資料によって確認できる場合には5年の通算在留期間に含めない取扱いを示しています。

対象となる休業は特定技能1号としての活動を行えず、原則として次の条件を満たすものです。

休業の原因対象となり得る休業期間
通常の病気・けが原則1年以下
労災による病気・けが3年以下

さらに、休業期間は連続して1か月を超える期間である必要があります。
数日間の自宅療養や、断続的な通院によって一部の日だけ働けなかった場合はこの取扱いの対象外とされています。

労災の場合に「3年以下」とされているのは3年間の在留が自動的に認められるという意味ではなく、あくまで5年の通算期間から除外できる休業期間の上限を示したものです。

休業しただけでは5年から自動的に除外されない

病気やけがによる休業中も、特定技能1号の在留資格は直ちに失われるわけではありません。
ただし、在留カードに記載された在留期限が休業日数に応じて自動的に延びるわけでもありません。

休業期間を5年の通算在留期間に含めない取扱いを希望する場合、入管庁は5年の通算期間が満了する前、おおむね3か月前を目安として、休業期間を証明する資料を添えた在留諸申請を行うよう案内しています。

そのうえで提出資料から休業期間を確認でき、在留を認めるに足りる相当の理由があると判断された場合に許可されます。

そのため次のように考えている場合は注意が必要です。

  • 労災認定を受ければ休業日数分だけ必ず5年が延びる
  • 会社が休業証明書を作ればそれだけで期間から除外される
  • 復職した後は休業中の資料を残しておく必要がない
  • 現在の在留期限を過ぎても治療中であればそのまま在留できる

5年の通算期間からの除外は労災認定だけで完結するものではなく、在留申請の中で休業の事実と期間を確認してもらう必要があります。

1か月以上働けない場合の「受入れ困難に係る届出」

特定技能外国人が業務中の病気・けがなどにより1か月以上活動できない事情が生じた場合、特定技能所属機関には「受入れ困難に係る届出」が関係します。

届出期間は事由が発生した日から14日以内です。
参考様式第3-4号の届出書に加え、1か月以上活動できない場合には参考様式第5-14号「1か月以上の活動未実施期間が生じた際の状況説明書」を使用することが想定されています。

ここでいう「受入れ困難」は必ずしも退職や雇用契約の終了だけを意味しません。
雇用を続けながら療養し、復職を予定している場合であっても、1か月以上特定技能の活動ができない事情が生じたときは届出対象になります。

なお、雇用契約を終了した場合には受入れ困難に係る届出とは別に、特定技能雇用契約の終了に関する届出も併せて確認します。

「雇用を継続しているから届出は不要」と判断せず、活動できない期間と事由を基準に判断することが重要です。

通常の病気・けがと労災で異なる確認資料

通算在留期間に関する取扱いを希望する場合、入管庁が例示している主な資料は次のとおりです。

  • 休業期間に関する申立書(参考様式第1-30号)
  • 医師の診断書
  • 治療・入院の事実と期間が分かる医療機関の資料
  • 労災保険の支給決定通知書の写し(労災の場合)
  • 休業期間中のタイムカードまたは出勤簿の写し
  • 休業期間中の給与明細書の写し
  • 給与が振り込まれている口座の通帳の写し
  • 給与振込口座指定・同意書の写し

労災の場合は通常の病気・けがに関する資料に加えて、労災保険の支給決定通知書が確認資料として挙げられています。

事故直後は治療や労災手続への対応が優先され、在留手続に必要な資料の確認は後回しになりがちです。
ですが、数年後に5年の通算期間を確認する段階で当時の勤怠記録や給与関係資料を集め直すのは簡単ではありません。

診断書だけを保存するのではなく、休業の開始日・終了日、勤怠、給与、労災手続の結果を一つの時系列で確認できるようにしておくと、後の在留申請と整合させやすくなります。

休業中に会社と登録支援機関が確認したいこと


長期休業では本人の治療状況だけでなく、雇用契約、生活、在留期限、復職予定を継続して確認する必要があります。

在留期限

休業中でも在留期限は到来します。
治療中であることを理由に期限管理を止めることはできません。
本人の在留カードを確認し、更新準備の時期を共有します。

雇用契約と復職予定

会社が雇用を継続するのか、休職制度をどのように適用するのか、復職後に従前の特定技能業務へ戻れる見込みがあるのかを整理します。
医療上の判断を会社だけで決めず、診断内容や就業上の配慮を確認します。

本人への説明

労災保険、休業中の収入、治療費、在留期限、入管への届出はそれぞれ別の制度です。
本人が「労災の手続をしたので在留手続も終わった」と誤解しないよう、通訳などを活用して説明します。

支援の継続

1号特定技能外国人については休業中であっても、支援計画や本人の生活状況を踏まえた対応が必要になる場合があります。
登録支援機関へ全部委託している場合でも、受入れ企業自身が雇用状況と届出の要否を把握しておく必要があります。

事故発生から復職・更新までのチェックリスト

事故発生直後

  • 本人の受診と安全確保を優先した
  • 発生日時、場所、作業内容、目撃者を記録した
  • 労災保険の手続を確認した
  • 本人が理解できる方法で今後の流れを説明した

休業が長引くと分かったとき

  • 連続して1か月を超える休業となる見込みか確認した
  • 受入れ困難に係る届出の要否と14日以内の期限を確認した
  • 参考様式第5-14号に必要な事項を整理した
  • 在留期限と5年の通算期間の取り扱いを確認した

休業中

  • 診断書や治療期間が分かる資料を保存した
  • タイムカード、出勤簿、給与明細を保存した
  • 労災保険の支給決定通知書を保存した
  • 雇用継続と復職予定を定期的に確認した

更新・通算期間の確認前

  • 休業期間に関する申立書の最新版を確認した
  • 休業の開始日と終了日を資料間で一致させた
  • 通算5年の満了時期を確認した
  • 最新の入管庁資料と提出書類一覧を確認した

まとめ

特定技能1号外国人が病気やけがで働けない場合、一定の休業期間について5年の通算在留期間に含めない取扱いがあります。
通常の病気・けがは原則1年以下、労災による病気・けがは3年以下とされ、いずれも連続して1か月を超える休業であることが前提です。

ただし、休業しただけで自動的に通算期間から除外されるわけではありません。
休業の事実と期間を示す資料をそろえ、5年の満了前に在留諸申請を行い、許可を受ける必要があります。

また、1か月以上特定技能の活動ができない事情が生じた場合には雇用を継続していても、受入れ困難に係る届出が関係します。

労災発生時は「治療と労災保険」「14日以内の入管への届出」「在留期限」「5年の通算期間」をそれぞれ並行して管理することが重要です。

制度や様式は変更される場合があります。
実際の届出・申請時には入管庁が公表している最新の運用要領、参考様式、提出書類一覧を確認してください。

参考情報

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所