はじめに
「自分の給料だけでは少し不安だけれど、妻(夫)のアルバイト代を足せば大丈夫だろう」。
技術・人文知識・国際業務などの在留資格で働き、「家族滞在」の家族と暮らす方の中にはこのように考えて永住申請の準備をしている方もいると思います。
出入国在留管理庁は2026年10月1日に「永住許可に関するガイドライン」を改定しました。
ガイドラインとは永住許可の審査でどのような点が考慮されるかを入管庁が公表したものです。
改定後のガイドラインでは世帯の収入の見方が具体的に書かれ、家族滞在の家族が資格外活動許可(本来の在留資格では認められていないアルバイトなどを時間などの条件つきで認める許可)を受けて得た収入は世帯年収に合算しないことが明記されました。
この記事では改定後のガイドラインの原文と、同じ日に公示された意見募集(パブリックコメント)の結果をもとに、家族と暮らす方が申請前に世帯で確認したい点を整理します。
※この記事は2026年10月19日時点で確認した公式資料をもとに作成しています。
家族滞在の配偶者のアルバイト収入は世帯年収に合算されない
改定後のガイドラインによると、家族滞在など就労を目的としない在留資格の家族が資格外活動許可を受けて得たアルバイトなどの収入は申請者の世帯年収に合算されません。
ガイドラインはこのような在留資格の人は資格外活動許可によって「例外的・限定的に」収入を得られるにすぎないため、世帯年収に算入することは適当ではないと説明しています。
意見募集では「共働き世帯が不利になる」という意見も出ましたが、入管庁はガイドラインを修正していません。
たとえば、次のような世帯を考えてみます(金額は説明のための例です)。
| 家族 | 在留資格 | 年収の例 | 世帯年収への合算 |
|---|---|---|---|
| 本人(申請者) | 技術・人文知識・国際業務 | 400万円 | 合算される |
| 配偶者 | 家族滞在(資格外活動許可あり) | 100万円 | 合算されない |
| 子 | 家族滞在 | なし | ― |
この例では審査で見られる世帯年収は500万円ではなく400万円ということになります。
一方で、ガイドラインは世帯を「住居及び家計を共にしている人の集まり」としているため、同居している配偶者や子は収入が合算されなくても世帯の人数には含まれると読めます(意見募集の意見もこの前提で書かれています)。
つまり、家族の人数に応じた基準を本人の収入で満たす必要があるということです。
なお、この記事で取り上げているのは「家族滞在」の家族です。
配偶者が就労系の在留資格で働いている場合や、日本人の配偶者等など身分にもとづく在留資格の場合は扱いが異なります。
世帯年収の基準は「世帯人数に応じた日本人世帯の平均」
改定後のガイドラインは、申請時点の世帯年収が世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準(「年収水準」)に継続して達しているかを考慮するとしています。
ただし、年収水準の具体的な金額はガイドラインに書かれておらず、入管庁は意見募集の結果で金額を公表しない考えを示しています。
審査の実効性や適正な運用を守るためという理由です。
インターネット上には「世帯人数ごとの目安額」を示す記事もありますが、これらは統計などからの推計であり、入管庁が示した基準額ではありません。
この記事でも金額の目安は掲載していません。
人数については次の点がガイドラインに書かれています。
- 扶養している親族は、外国に住んでいても世帯人数に加えられる
- 世帯人数が5人以上の場合は、生活費などの増加分を加えた基準で判断される
母国の両親を扶養に入れている方は、日本で同居している家族に加えてその人数も基準に反映されます。
家族滞在の配偶者の収入が合算されないことと重なると、「人数は多いのに数えられる収入は本人の分だけ」という状況になりやすいため注意が必要です。
合算できる収入とできない収入を整理する
合算できるかどうかは「同じ世帯かどうか」と「その人の在留資格が就労を目的とするものかどうか」で分かれます。
ガイドラインの記載をもとに整理すると次のとおりです。
| 収入の種類 | 世帯年収への合算 | ガイドラインの記載 |
|---|---|---|
| 申請者本人の収入 | 合算する | 申請者の年収と同一生計世帯の構成員の年収を合算 |
| 同じ世帯で、就労を目的とする在留資格の家族の収入 | 合算する | 同上 |
| 同じ世帯で、家族滞在などの家族が資格外活動で得た収入 | 合算しない | 「例外的・限定的」な収入のため算入は適当でない |
| 成人した子など、親の扶養から外れた人が申請する場合の親の収入 | 合算しない | 父母の収入を算入せずに判断 |
ここでいう「就労資格」は日常的な意味で働いている人すべてを指すわけではありません。
ガイドラインでは技能実習、育成就労、特定技能1号、企業内転勤、一部の特定活動などを除外して定義しています。
そのため、家族が働いている場合でも、在留資格によってはその収入を永住審査上の世帯年収に合算できないことがあります。
収入を合算できるかどうかは実際に働いているかだけで判断せず、ガイドライン上の在留資格の定義と本人・家族の在留状況を確認することが大切です。
いつの申請から適用される?判断の基準は「申請日」
改定後のガイドラインは、原則として令和9年(2027年)4月1日以降の申請から適用されます。
ただし、世帯年収に関する部分と公共の負担に関する部分は、改定日の6か月前の日以降に申請し、改定日に申請中の案件にも適用するとされています。
入管庁は意見募集の結果で、標準的な処理期間が4〜6か月であることをその理由に挙げています。
申請日ごとに整理すると次のようになります。
| 申請日 | 適用されるガイドライン |
|---|---|
| 2026年3月31日まで | 2026年2月24日改訂版 |
| 2026年4月1日~2027年3月31日 | 原則として2026年2月24日改訂版。ただし、世帯年収と公共の負担に関する指定項目は2026年10月1日改定版を適用 |
| 2027年4月1日以降 | 2026年10月1日改定版全体 |
このように、2026年10月2日から2027年3月31日までに申請する場合も、世帯年収に関する新しい考え方は適用されます。
申請した日によって適用範囲が異なるため、申請時には出入国在留管理庁の最新案内を確認しましょう。
また、基準になるのは許可された日ではなく申請した日です。
なお、ここでいう適用時期は許可が出た日ではなく、原則として申請日を基準に整理されています。
配偶者の税・年金・保険料も「世帯単位」で見られる
収入は合算されなくても家族滞在の配偶者が審査と無関係になるわけではありません。
ガイドラインは税金や公的年金・公的医療保険の保険料など(公租公課)についても、原則として同一生計世帯単位で審査するとしています。
未納はもちろん、過去に滞納処分を受けたことなども原則として消極的に評価されるとされています。
入管庁は意見募集の結果で、税や社会保険の記録は確認できる範囲でさかのぼって確認すること、個別審査のため一律の基準を設けることは難しいことも示しています。
どこまでさかのぼるかの年数は公式資料には書かれていません。
家族滞在の配偶者がアルバイトをしている世帯では、たとえば次の点を家族で確認しておくとよいでしょう。
- 配偶者に住民税がかかっている場合、納期限どおりに納めているか
- 配偶者が本人の社会保険の扶養に入っているか、自分で国民健康保険・国民年金に加入しているか
- 自分で加入している場合、保険料や年金保険料を期限どおりに納めているか
- 資格外活動許可の条件(原則として週28時間以内など)を守って働いているか
最後の点について、ガイドラインは入管法上の義務として「在留資格外の活動の禁止」も挙げています。
世帯の収入を増やそうとして配偶者の勤務時間を増やし、許可の範囲を超えてしまうと収入は合算されないうえに別の問題を生むおそれがあります。
なお、住民税の課税・納税証明書はその年の1月1日に住んでいた市区町村で発行されます。
2027年4月以降の申請では年金の受給見込額や日本語能力も考慮される
2027年4月1日以降の申請には、ガイドライン全体が適用されます。世帯年収のほかに次のような点が考慮要素として加わります。
| 項目 | ガイドラインの内容(要旨) |
|---|---|
| 年金の受給見込額 | 申請時の年齢・加入状況・年収から将来の受給見込額を推計。不足する場合も、不足分を補える金融資産があれば充足とみなす。配偶者がいる場合は夫婦の分を合わせて判断する旨の記載がある |
| 日本語能力 | 「日本語教育の参照枠」のB1相当レベル以上。高度人材とその家族など一部に例外あり |
| 制度・ルールの理解 | 「生活・就労ガイドブック」の事項を中心に理解度を確認 |
| 学齢期の子の就学 | 学齢期の子を養育する親の場合、子が小学校・中学校に通っていること |
年金については配偶者の加入状況も判断に関わる書き方になっています。
具体的な計算方法や基準額は公表されていないため、この記事では「配偶者の年金加入状況も把握しておく」という範囲にとどめます。
小学生・中学生の子がいる家族滞在の世帯は子の就学状況も考慮される点に注意が必要です。
申請前に世帯で確認したいチェックリスト
ここまでの内容を申請前に家族で確認できる形にまとめます。
- 申請日(予定日)が、上の「いつの申請から適用される?」の表のどの期間に入るか
- 同じ住まいで家計を共にしている家族は何人か。母国で扶養している親族はいるか
- 家族の在留資格は何か(家族滞在か、就労系か、身分系か)
- 家族滞在の家族の収入を除いたとき、本人(と就労系の家族)の収入で生活が成り立つかを説明できるか
- 配偶者を含め、世帯全員の税金・年金・医療保険料に未納や遅れがないか
- 配偶者のアルバイトが資格外活動許可の範囲内か
- 2027年4月以降に申請する場合、年金の加入状況、日本語能力、子の就学状況を確認したか
まとめ
2026年10月1日に改定された永住許可のガイドラインでは世帯年収を世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入と比べて審査することが示されました。
家族滞在の配偶者が資格外活動許可を受けて得たアルバイト収入は世帯年収に合算されず、その一方で配偶者も世帯の人数には含まれるため、本人の収入中心で基準を満たす必要があります。
適用の判断は申請日を基準に行われ、2026年4月1日以降に申請して改定日に申請中だった案件にも世帯年収の基準が適用されます。
収入が合算されない配偶者でも、税・年金・医療保険料の納付状況は世帯単位で審査されるため、申請前に家族全員の状況を確認しておくことが大切です。
2026年10月2日から2027年3月31日までの申請の扱いや、就労系以外の家族の在留資格ごとの扱いなど、公式資料に明記がない点は、申請前に地方出入国在留管理局などで個別に確認してください。
参考情報
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」(令和8年10月1日改定)
- e-Govパブリック・コメント「永住許可に関するガイドライン案改定に係る意見募集の結果について」(2026年10月1日公示)
- 意見募集結果 別紙(意見と入管庁の考え方、PDF)
- 出入国在留管理庁「永住許可(入管法第22条)」
- 出入国在留管理庁「永住許可申請」(手続案内・提出書類)
- 出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」
- 出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」
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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所




