はじめに
介護福祉士養成施設(専門学校など)を卒業した人は国家試験に合格していなくても、一定の期間は介護福祉士になれる「経過措置」があります。
留学生にとっては、この措置が在留資格「介護」で働き続けられるかどうかに直結します。
この経過措置は、もともと「令和8年度(2026年度)までの卒業者」が対象でした。
ところが、2026年6月に成立した法改正で、対象が「令和13年度(2031年度)までの卒業者」に延びました。
ただし、延びたのは仕組みの一部だけで、令和9年度以降に卒業する人は「卒業後5年以内に合格すること」が必要になりました。
この記事では留学生を採用する介護施設の担当者と留学生本人に向けて、卒業年度ごとの違い、在留資格「介護」との関係、施設が確認しておくことを整理します。
経過措置の内容
結論から言うと、令和13年度(2031年度)までに養成施設を卒業する人は国家試験に合格していなくても卒業後5年間は介護福祉士の資格を持てます。
根拠は「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)です。
この法律は令和8年6月19日に成立し、6月25日に公布されました。
施行日(法律の効力が始まる日)は原則として令和9年4月1日で、一部は公布日から施行されています。
厚生労働省の概要資料ではもともとの経過措置を次の2つに分けています。
- ① 卒業後5年間は試験に合格しなくても介護福祉士の資格を持てる
- ② 卒業後5年間続けて介護の仕事をすれば6年目以降も資格を持ち続けられる
今回延長されたのは①だけです。②は予定どおり令和8年度卒業者までで終わります。
なお、この経過措置は留学生だけの制度ではなく、日本人も含めた養成施設の卒業者全体が対象です。
卒業年度による経過措置の違い
いちばん大きな変化は、令和9年度(2027年度)以降に卒業する人は5年間働いてもそれだけでは資格を持ち続けられないという点です。
令和9年度から令和13年度までの卒業者は卒業後5年以内に国家試験に合格しないと、その後は介護福祉士の資格がなくなります。
卒業年度ごとの扱いを表にすると次のとおりです。
| 卒業年度 | 卒業後5年間 | 6年目以降 |
|---|---|---|
| 令和8年度(2026年度)まで | 不合格でも資格あり | 5年間続けて介護の仕事をすれば資格を維持できる |
| 令和9年度〜令和13年度(2027〜2031年度) | 不合格でも資格あり | 国家試験に合格していなければ資格なし |
| 令和14年度(2032年度)以降 | 国家試験の合格が必要 | 同左 |
たとえば、令和9年度末(2028年3月)に卒業する留学生なら、2033年3月までが「卒業後5年間」の目安になります。
その間には国家試験が毎年1回あるので、卒業の年を含めて何回受験できるかを入社時に数えておくと計画が立てやすくなります。
在留資格「介護」になるためには
在留資格「介護」は、介護福祉士として登録した人が日本の施設などとの契約にもとづいて介護の仕事をするための在留資格です(入管法別表1の2の表)。
ここで大事なのは「卒業した」「合格した」だけでは足りず、介護福祉士として登録されていることが必要だという点です。
登録証が交付されるまでは在留資格「介護」には変更できません。
経過措置で介護福祉士になった留学生も、登録を受ければ在留資格「介護」に変更できます。
問題は令和9年度以降の卒業者が5年以内に合格できなかった場合です。
介護福祉士の資格がなくなれば在留資格「介護」の前提がなくなり、そのままの在留資格で介護の仕事を続けることは難しいと考えられます。
卒業直後から登録証が届くまで
卒業した年度の翌年度の4月1日から登録証が届くまでの間は、在留資格「特定活動」で介護の仕事をすることが認められています。
登録証は4月1日より後に交付されることが多く、4月1日までに「介護」へ変更できない人が出ます。その空白を埋めるための措置です。
留学生は住所地を管轄する地方出入国在留管理官署で「特定活動」への変更を申請します。
入管庁の案内では主な提出資料は次のとおりです。
- 養成施設の卒業証書の写しまたは卒業証明書(卒業見込証明書で申請した場合は、結果を受け取るまでに卒業の証明を出す)
- 雇用契約書など、労働条件と仕事の内容が分かる書類の写し
- 勤務先の概要が分かる資料(施設の許可や指定の年月日が書かれたもの)
報酬は日本人が同じ仕事をする場合と同じ額以上であることが求められます。
配偶者や子どもがいる場合は家族も「特定活動」への変更が認められることがあります。
採用する施設が確認しておくこと
施設がまず確認すべきなのは「その人が何年度に卒業したか」です。
卒業年度で試験に合格しなかった場合の将来が大きく変わるためです。
採用時には卒業年度・介護福祉士の登録の有無・国家試験の合否・在留カードの在留資格と期限を書類で確認しておきましょう。
- 養成施設の卒業年度(卒業証書・卒業証明書で確認)
- 介護福祉士登録証の有無と、経過措置による登録かどうか
- 国家試験の受験歴と合否
- 在留カードの在留資格(留学・特定活動・介護など)と在留期限
- 「卒業後5年間」がいつ終わるかの目安(令和9年度以降の卒業者)
- それまでに国家試験を何回受けられるか、勉強の時間をどう確保するか
後半の2つは法律上の義務ではありません。
ただ、合格できないまま5年が過ぎると本人が介護福祉士として働けなくなり、施設も人員配置を組み直すことになります。
本人と施設が同じ期限を共有しておくことが実務上は大切です。
5年以内に合格できなかった場合
介護福祉士の資格がなくなったあとも介護の仕事を続けたい場合、在留資格「特定技能」(介護分野)への変更が選択肢の一つになります。
介護分野の特定技能の運用要領(令和7年4月21日一部改正)では、介護福祉士養成施設を修了した人は、介護技能評価試験の合格と同等以上の水準があると評価され、日本語の試験(日本語基礎テスト等と介護日本語評価試験)も免除されるとされています。
ただし、「介護」と「特定技能1号」は別の在留資格です。
特定技能1号には在留できる期間の上限(通算5年)があり、受け入れる施設には支援計画の実施や協議会への加入などの義務がかかります。
家族の帯同も「介護」では認められますが特定技能1号では原則として認められません。
在留資格を変更しても同じ条件で働けるわけではないので、できるだけ卒業後5年以内の合格を目指すのが基本になります。
よくある質問
Q1. 令和8年度(2027年3月)に卒業する留学生はこれまでどおりですか?
はい。卒業後5年間は試験に合格していなくても資格を持て、その5年間続けて介護の仕事をすれば6年目以降も資格を維持できる仕組みが対象です。
「続けて」という点が大事なので、途中で介護の仕事を離れる場合の扱いは厚生労働省や養成施設に確認してください。
Q2. 令和9年度以降に卒業してすぐに在留資格「介護」になれますか?
介護福祉士として登録されれば「介護」への変更を申請できます。
登録証が届くまでの「特定活動」の扱いが令和9年度以降の卒業者にもあるかは、確認日時点で入管庁の案内が更新されていないため、今後の公表を確認してください。
Q3. 在留資格「介護」の人が卒業後5年以内に合格すれば何か手続が必要ですか?
国家試験の合格後の登録の手続については、厚生労働省と登録機関(社会福祉振興・試験センター)の案内を確認してください。
まとめ
2026年の法改正で介護福祉士養成施設の卒業者が試験に合格しなくても資格を持てる経過措置は、令和13年度(2031年度)の卒業者まで延びました。
ただし「5年間働けば資格を維持できる」仕組みは令和8年度卒業者までで終わります。
令和9年度以降に卒業する留学生は卒業後5年以内に国家試験に合格しないと介護福祉士の資格がなくなり、在留資格「介護」の前提も失います。
採用する施設は卒業年度・登録の有無・試験の合否・在留カードを確認し、本人と「卒業後5年」の期限を共有しておくとあとから慌てずに済みます。
登録証待ちの「特定活動」の扱いが令和9年度以降の卒業者にも続くかは、今後の入管庁の案内を確認してください。
※本記事の情報は2026年10月28日に公式資料で確認した内容です。
参考情報
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の概要について」
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要」
- 厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会(第135回)資料1「社会福祉法等の一部を改正する法律について(報告)」(令和8年6月29日)
- 参議院「社会福祉法等の一部を改正する法律案」議案情報
- 出入国在留管理庁「介護福祉士養成施設を卒業して介護等の業務に従事する留学生の取扱い」
- 出入国在留管理庁「特定技能 介護分野」
- 「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領(令和7年4月21日一部改正)
- 山脇康嗣『詳説 入管法と外国人労務管理・監査の実務〔第3版〕』(新日本法規、令和4年9月)第2章第3節「介護」
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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所




