はじめに

特定技能外国人を雇用している会社が合併するとき、担当者の方からすると「雇用契約はそのまま引き継がれるのだから、入管へ届出を出せばよいのでは」と考えるかもしれません。

しかし、会社法上の権利義務が引き継がれることと、入管手続上の「特定技能所属機関」が変わるかどうかは別の問題です。

単なる社名変更で法人そのものが変わらない場合と、吸収合併などによって雇用主となる法人が変わる場合では必要になる手続が異なります。
確認しないまま合併日を迎えると、会社側は届出のつもりでも実際には在留資格変更許可申請の準備が必要だったという事態も考えられます。

この記事では合併等を予定する特定技能所属機関が確認したいポイントを商号変更との違いから順番に説明します。

最初に確認するのは「法人格が変わるか」

合併と聞くと会社名や看板が変わる場面を思い浮かべるかもしれません。
しかし、入管手続においては次の点を確認します。

  • 合併後も現在の法人が存続するのか
  • 現在の会社が消滅し、別の法人が雇用主になるのか
  • 新しく設立された法人へ雇用関係が移るのか
  • 特定技能外国人との契約当事者は誰になるのか

会社名が変わったかではなく、外国人と雇用契約を結ぶ法人そのものが変わったかを確認する必要があります。

出入国在留管理庁の随時届出Q&Aでは、合併や分割に伴って特定技能所属機関が変更になった場合、特定技能雇用契約の変更に係る届出は不要で、別途在留資格変更許可申請が必要と説明されています。

「合併だから届出」「社名が変わったから変更申請」と判断せず、登記事項証明書、法人番号、合併の内容、雇用契約の承継先を確認する必要があります。

商号変更と会社合併は同じではない

同じ法人が営業を続けたまま、会社名だけを変更することがあります。これが商号変更です。
法人格や法人番号が変わらず、雇用契約の相手も同じ法人であれば、別法人への転職とは異なります。

この場合、会社側に特定技能雇用契約の変更に係る届出は求められません(Q&A Q2-8)。
一方で、外国人本人には、所属(契約)機関の名称・所在地の変更について、原則14日以内に届出を行う義務があります(入管法19条の16)。
会社は本人の届出を促す立場になります。
なお、指定書の記載を直したい場合は希望により最寄りの出入国在留管理官署へ申し出ます。

会社側の変更点最初に確認すること入管手続の考え方
商号だけを変更法人格・法人番号・契約当事者が同じか会社の雇用契約変更届出は不要。外国人本人に名称変更届出を促す。
本店所在地を変更法人格が同じか、就業場所(事業所)も変わるか所在地変更は本人届出。就業場所が変わる場合は雇用契約変更届出の要否を別に確認
吸収合併現在の雇用主が存続会社か消滅会社か消滅会社側の外国人は変更許可申請を検討。存続会社側は雇用主が変わらないか確認
新設合併新法人が雇用主になるか新たな所属機関への変更として変更許可申請を検討
会社分割・事業譲渡雇用契約がどの法人へ移るか契約相手が変わる場合は変更許可申請を検討

登記上の手続で雇用契約が承継されても「特定技能の所属機関も自動的に変更になる」とは限りません。

実際にどの手続が必要かは組織再編の方法と外国人ごとの契約関係によって変わります。

所属機関が変わる場合は在留資格変更許可申請を確認する

特定技能の在留資格では外国人が所属する機関が指定書に記載されます。
そのため、合併や会社分割などで雇用主となる特定技能所属機関が変わる場合は別途手続きが必要になります。

随時届出Q&Aでは合併や分割に伴い特定技能所属機関が変更になった場合、特定技能雇用契約の変更届ではなく、別途在留資格変更許可申請が必要と説明されています。

ここで注意したいのは、「雇用契約変更の届出を出せば新しい法人ですぐ働ける」と安易に判断しないことです。

吸収合併は存続会社側と消滅会社側で分けて考える

吸収合併の場合、すべての外国人に一律で同じ申請が必要になるわけではありません。

  • 消滅会社に所属している外国人:雇用主となる法人が変わるため、所属機関の変更として在留資格変更許可申請の検討が必要です。
  • 存続会社に所属している外国人:雇用主となる法人自体は変わらないため、原則として変更許可申請の対象にはなりません。ただし、存続会社が合併を機に商号や本店所在地も変える場合は、名称・所在地変更の手続きが加わります。

効力発生日から許可までの就労に注意する

消滅会社側の外国人について、合併の効力発生日と許可の時期がずれると、合併後の就労をどう扱うかが問題になります。
合併後も業務内容、勤務地、給与が変わらないとしても、指定書に記載された所属機関以外で就労を始めてよいかは別の問題です。

申請のタイミングや、許可が出るまでの就労の扱いについては事前に管轄の出入国在留管理官署へ相談しておくことをおすすめします。

会社の届出と外国人本人の届出を分けて考える

会社側が行う特定技能関係の届出と、外国人本人が行う所属機関に関する届出は目的も提出者も異なります。

特定技能を含む一定の就労資格を持つ外国人は、契約機関の名称・所在地の変更、機関の消滅、契約の終了、新たな契約の締結などがあった場合、原則として14日以内に所属(契約)機関に関する届出を行う必要があります。

一方、特定技能所属機関は雇用契約の変更・終了・新たな締結、受入れ困難、支援計画や支援委託契約の変更などに応じた随時届出があります。
随時届出は届出事由が生じた日から14日以内に行います。
また、将来の日付を事由発生日とする届出は提出できないため、合併日より前に先回りして出せるものではありません。

会社が必要な手続を行ったから外国人本人の届出も自動的に完了するわけではありません。

ただし在留資格変更許可申請を行う場面で、同じ事実についてどの届出が必要になるかは合併の形態や申請時期によって異なる可能性があります。
重複提出を避けるためにも次の三つを確認します。

  1. 外国人本人が行う届出
  2. 特定技能所属機関が行う随時届出
  3. 外国人本人が行う在留資格変更許可申請

支援計画・協力確認書・分野別手続も確認する

所属機関の変更だけを確認して終わりとは限りません。
1号特定技能外国人を受け入れている場合は、支援を行う主体や支援内容に変更がないかも確認します。

例えば合併を機に「登録支援機関との委託契約を変更する」「支援責任者や担当者を変更する」「勤務地や住居地が変わる」といった場合は、支援計画の届出が必要になる可能性があります。

また、2025年4月から始まった自治体との共生施策に関する協力確認書についても、特定技能所属機関が別法人に変わる場合や、事業所・住居地が変わる場合は、提出先の自治体への再提出が必要かを確認します。
事業所または住居地のある自治体が案内している最新の提出方法を確認してください。

さらに、業種によっては分野別協議会の登録情報、営業許可、事業所要件などの変更手続も関係する場合があります。

入管への申請だけでなく、支援・自治体・分野別制度の三方向から変更点を洗い出すことが重要です。

合併の効力発生前に確認したい資料


入管手続を合併後まで待つと必要資料の準備と実際の就労予定がかみ合わなくなるおそれがあります。
少なくとも次の資料や情報は効力発生前に整理しておきたいところです。

  • 合併契約書、会社分割契約書、事業譲渡契約書など
  • 合併前後の登記事項証明書
  • 旧会社と新会社の法人番号
  • 雇用契約の承継関係が分かる資料
  • 合併後の雇用条件書
  • 合併後の業務内容・勤務場所・報酬額
  • 支援を自社で行うか、登録支援機関へ委託するか
  • 合併後の支援責任者・支援担当者
  • 協力確認書を提出した自治体と提出日
  • 分野別協議会や営業許可に関する変更の有無

会社の担当者が管理する合併資料と外国人雇用担当者が管理する在留・支援資料を早い段階で突合させる必要があります。

組織再編の担当部署と外国人雇用の担当部署が異なる会社では合併の情報が後から共有されることも考えられます。
特定技能外国人の一覧、在留期限、指定書の所属機関、申請中の案件に加え、「存続会社側か消滅会社側か」の区分も一つの表にまとめると確認しやすくなります。

合併前の確認チェックリスト

最後に受入れ会社が合併前に確認したい項目を整理します。

  • 現在の特定技能所属機関は存続するか、消滅するか
  • 合併後の雇用主はどの法人になるか
  • 法人番号と登記上の本店所在地は変わるか
  • 外国人の指定書に記載された所属機関はどこか
  • 在留資格変更許可申請が必要になるか
  • 変更申請が必要な場合、いつ申請し、いつから新法人で働くか(許可前の就労の扱いを入管に確認したか)
  • 外国人本人の所属機関に関する届出が必要か
  • 雇用契約、勤務地、業務内容、報酬に変更があるか
  • 支援計画や支援委託契約に変更があるか
  • 協力確認書の提出先はどこか
  • 分野別協議会や営業許可の変更手続があるか
  • 更新・変更申請中の外国人がいないか

最も避けたいのは合併登記が終わってから「誰が新しい雇用主なのか」慌てて確認することです。

会社の合併日は事前に決まることが多いため、その日から逆算して対象者、申請、届出、支援体制を整理します。

まとめ

特定技能外国人を雇用する会社が合併してもすべてのケースが届出だけで終わるわけではありません。

同じ法人の商号変更や所在地変更であれば、会社側の特定技能雇用契約の変更届出は不要で、外国人本人の名称・所在地変更の届出を中心に確認します。
一方、合併、会社分割、事業譲渡などによって外国人の雇用主となる法人が変わる場合は、在留資格変更許可申請が必要になる可能性があります。
吸収合併では存続会社側か消滅会社側かで結論が分かれる点にも注意が必要です。

判断の基準は「会社名が変わったか」ではなく、「特定技能外国人と契約する法人格が変わったか」です。

そのうえで外国人本人の届出、会社側の随時届出、支援計画、協力確認書、分野別の手続を分けて確認します。
組織再編の方法によって結論が異なるため、合併の効力発生日より前に登記・契約・在留資格の情報を確認することが大切です。

(参考)出入国在留管理庁「特定技能所属機関からの随時届出に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」令和7年6月 Q1-2、Q1-7、Q2-8、Q2-9

参考情報

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所