はじめに

「夫が日本の会社で働いていて自分は家族滞在です。他のお店でも少し働いています。」
飲食店のアルバイト面接で、こう話す応募者に会うことがあるかもしれません。

家族滞在(日本で働く外国人などに扶養される配偶者や子のための在留資格)の人は許可を受ければアルバイトができます。
ただし勤務時間には上限があり、掛け持ちをしている場合は、すべての勤務先の時間を合計して考える必要があります。

ところが店にとって他の勤務先で何時間働いているかは見えません。
本記事では家族滞在の外国人をアルバイトで雇う店が、採用時とシフト作成時に何を確認すればよいかを公式資料をもとに整理します。
飲食店を例にしていますがコンビニやスーパーなど他の業種でも考え方は同じです。

全国の在留外国人は428万1,026人と過去最高を更新しています(出入国在留管理庁、令和8年6月末現在、2026年10月16日公表)。
外国人住民が増えると、家族と一緒に暮らす人が近くの店に応募する場面も増えると考えられます。

家族滞在の人が働くには

家族滞在は本来、働くための在留資格ではありません。
そのためアルバイトをするには「資格外活動許可」を受けている必要があります。

資格外活動許可とは今の在留資格で認められた活動のほかに収入を得る活動をするための許可です。

出入国在留管理庁(入管)の案内では、家族滞在の人が受けられる許可には次の2種類があります。

許可の種類内容飲食店のアルバイトとの関係
包括許可1週につき28時間以内で、収入を得る活動を広く認める許可多くのアルバイトはこの許可で働いていると考えられます
個別許可特定の活動ごとに許可するもの許可された活動の範囲を個別に確認する必要があります

包括許可の場合、在留カードの裏面には「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)」などと記載されます。
飲食店でも接待を伴う店など風俗営業に当たる店では働けません。

なお、留学生には「学校の長期休業中は1日8時間まで」という特例がありますが、これは「留学」の在留資格の扱いです。
家族滞在の人は、年末年始や学校の夏休みの時期でも、原則どおり週28時間以内と考えておきましょう。

週28時間の数え方

掛け持ちをしている場合、週28時間は店ごとではなく、すべての勤務先の合計で判断します。

出入国在留管理庁のサイトに掲載された「外国人の適正な雇用にご協力ください」という資料では、複数のアルバイト先がある場合は、合計で週28時間以内でなければならないとされています。

たとえば次のようなケースを考えてみましょう(説明のための例です)。

あなたの店他の店(掛け持ち先)1週の合計判断
ケースA16時間10時間26時間28時間以内
ケースB16時間14時間30時間28時間を超える
ケースC16時間(その週だけ残業2時間)10時間28時間ちょうど上限。余裕がない

ケースBではどちらの店も「自分の店では16時間、または14時間だから問題ない」と考えがちです。
しかし、合計すると上限を超えています。
ケースCのように少しの残業やシフトの変更で上限に届いてしまうこともあります。

採用前に確認すること

採用する前に在留カードの表面と裏面の両方を確認します。

  • 表面の「在留資格」:「家族滞在」と書かれているか
  • 表面の「就労制限の有無」:家族滞在の場合は通常「就労不可」。この場合は裏面の許可が必要
  • 表面の「在留期間(満了日)」:期限が切れていないか
  • 裏面の「資格外活動許可欄」:「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)」などの記載があるか
  • カードが本物で有効か:入管の「在留カード等読取アプリケーション」と「失効情報照会」で確認できる

警視庁は在留カードの実物の提示を求め、読取アプリと失効情報照会で有効かどうかを確かめるよう案内しています。

ただし、在留カードで分かるのは「許可があるか」までで、他の店で何時間働いているかは分かりません。
そこで必要になるのが次の章で説明する本人からの申告です。

掛け持ち先の勤務時間を把握する

他の店での勤務時間は本人に申告してもらって把握します。
口頭だけでなく、書面で残しておくと安心です。

これは入管のルールとは別に、労働法の考え方とも一致します。
労働基準法第38条では、勤務先が分かれていても労働時間は原則として通算することとされています。
そして厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、他の勤務先での労働時間は労働者からの申告などで把握することとされています。

採用時に、たとえば次のような項目を申告書で確認する方法があります(様式は法令で決まっているものではなく、実務上の一例です)。

確認する項目書いてもらう内容の例
他の勤務先の有無ある/ない
他の勤務先の数と業種1か所、スーパーの品出し など
他の勤務先の1週の勤務時間毎週水曜・土曜に5時間ずつ、合計10時間 など
自社で働ける時間の上限28時間から他の勤務先の時間を引いた時間
変わったときの連絡他の勤務先が増えた、時間が変わったときはすぐ店長に伝える

申告書は日本語が得意でない人にも分かるよう、やさしい日本語や母国語を添えると確実です。
あわせて「合計で週28時間を超えると、あなた自身の在留にも影響する可能性がある」ことを本人に伝えておくと正確な申告を得やすくなります。

シフトを組むときの注意点

掛け持ちがある人のシフトは当店での上限を先に決め、残業やシフトの交代で超えないように管理します。

飲食店では急な欠員の穴埋めや、閉店作業が長引くことで予定より勤務時間が増えることがあります。
上限のそばでシフトを組むと少しの延長で超えてしまいます。

シフト作成時は次の点を確認しておくと安心です。

  • 他の勤務先の時間を足し、どの曜日を起算点にしても7日間で28時間を超えないか
  • 残業や早出も含めた実際の勤務時間(タイムカード)で数えているか
  • シフトの代わりを頼む前にその週の合計を確認しているか
  • 他の勤務先の時間が変わっていないか、定期的に本人に確認しているか
  • 在留カードの在留期間が近づいていないか

店の上限を「他の勤務先を引いた時間」より少し低く設定しておくと、急な延長があっても上限を超えにくくなります。

28時間を超えると

許可された時間を超えて働くと不法就労になり、そのように働かせた店は「不法就労助長罪」に問われるおそれがあります。

警視庁の案内では、働くことが認められていない外国人を雇った事業主などは不法就労助長罪として「3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はその併科」の対象とされています。
この罰則は育成就労制度を定める改正法により、5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金に引き上げられることになっています。

特に注意したいのは「知らなかった」では済まない場合があることです。
警視庁は在留カードの確認をしていないなどの過失がある場合は処罰の対象になると案内しています。
少なくとも本人からの申告や定期的な確認を記録で残しておくことは、店として確認を尽くしたことを示す材料になると可能性があります。

本人にとっても許可の範囲を超えて働くことは入管法違反であり、将来の在留期間の更新などで不利に扱われる可能性もあります。
店にとっても本人にとっても就業時間の管理は大切です。

雇ったときの届出

家族滞在の人をアルバイトで雇ったときもハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が必要です。
雇用保険に入るかどうかで出す書類と期限が変わります。

雇用保険出す書類雇ったときの期限辞めたときの期限
被保険者雇用保険被保険者資格取得届・喪失届(外国人雇用状況の届出を兼ねる)雇った日の翌月10日まで辞めた日の翌日から数えて10日以内
被保険者ではない外国人雇用状況届出書(様式第3号)雇った日の翌月の末日まで辞めた日の翌月の末日まで

アルバイトでは雇用保険の対象にならない勤務時間の人も多いと考えられますが、雇用保険に入らない人でも外国人雇用状況の届出は必要です。
加入要件に当たるかどうかは事業所を管轄するハローワークで確認してください。

まとめ

家族滞在の配偶者をアルバイトで雇うときは在留カードで許可の有無を確認するだけでは不十分です。
週28時間はすべての勤務先の合計で数えるため、掛け持ち先の時間を本人の申告等で把握し、余裕を残してシフトを組むことが大切です。

採用時と勤務中に確認することをもう一度整理します。

  • 在留カードの実物で、表面(在留資格・就労制限・在留期間)と裏面(資格外活動許可欄)を確認する
  • 他の勤務先の有無と勤務時間を書面で申告してもらい、変わったら伝えてもらう
  • 残業やシフトの代わりも含めて、どの7日間でも合計28時間を超えないようにする
  • 家族滞在には留学生のような長期休業中の特例は容易されていない
  • 雇ったときと辞めたときは、ハローワークへ外国人雇用状況を届け出る

※本記事は2026年10月21日時点で確認できた公式資料にもとづく一般的な情報です。個別の事案の判断を示すものではありません。

参考情報

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所