はじめに

特定技能1号で働く夫婦に日本で子どもが生まれたとき、受入れ企業や本人から次のような質問が出ることがあります。

「市役所へ出生届を出せば、子どもも日本で暮らせますか」

「在留資格はどうなるのでしょうか」

「特定技能1号は家族帯同ができないので、子どもは帰国しなければならないのでしょうか」

この問題を整理するには、出生届と在留資格を別の手続として考える必要があります。
出生届は子どもが生まれた事実を市区町村へ届け出る手続です。
一方、在留資格取得許可申請は外国籍となる子どもが日本で引き続き生活するための入管手続です。

出入国在留管理庁は特定技能1号について家族帯同を原則として認めていません。
しかし、日本で特定技能1号の夫婦の間に生まれた子どもについては人道上の配慮から「特定活動」が認められる場合があります。

ただし、出生しただけで特定活動が自動的に付与されるわけではありません。
この記事では出生後の手続を時系列に沿って整理し、会社側が本人へ案内するときに混同しやすい点も説明します。

自動的に日本国籍や在留資格が与えられるわけではない

まず確認したいのは子どもの国籍です。

父母がともに外国籍の場合、子どもが日本で生まれたという理由だけで、日本国籍を取得するわけではありません。
日本の国籍法は、出生地だけで国籍を決める仕組みではなく、父または母の国籍などを基準にしています。
父母がともに国籍を持たない場合などには例外がありますが、ここでは詳細は省きます。

子どもがどの国籍を取得するか、出生登録や旅券申請に何が必要かは父母の国籍国の法律によって異なります。
そのため、本国の大使館・領事館で行う手続も確認します。

また、両親が特定技能1号だからといって、子どもに特定技能1号が与えられるわけではありません。
特定技能1号は一定の技能・日本語能力を持つ人が、受入れ企業との雇用契約に基づいて働くための在留資格です。

「日本で生まれたから日本人」「親が特定技能だから子も特定技能」とはなりません。

市区町村への出生届

日本国内で子どもが生まれた場合、父または母は原則として、生まれた日を含めて14日以内に出生届を提出します。

出生届は子どもが生まれた事実を日本の行政へ届け出るための手続です。
父母が外国籍の場合でも必要になります。
一般に、病院などから出生証明書と一体になった出生届の用紙を受け取り、必要事項を記入して市区町村へ提出します。

出生地や一時滞在地など、住所地以外の市区町村へ提出できる場合もありますが、その後の住民票、児童手当、健康保険などを考えると、事前に提出先と必要書類を確認しておくと手続を進めやすくなります。

出生届と同時期に確認したい手続

  • 子どもの住民票に関する手続
  • 健康保険への加入
  • 児童手当
  • 子どもの医療費助成
  • 乳幼児健診や予防接種の案内
  • 出産育児一時金などの健康保険関係

これらは在留資格取得許可申請とは別の制度です。
加入している健康保険や世帯の状況によって取扱いが異なるため、市区町村や勤務先の担当窓口で確認します。

出生届を提出しても、子どもの在留資格取得許可申請が完了したことにはなりません。

日本で60日を超えて暮らす場合

日本で出生した外国籍の子どもは、入国審査を受けて日本へ入ってきたわけではありません。
そのため、出生後に日本で引き続き暮らす場合は「在留資格取得許可申請」を行います。

出入国在留管理庁は、出生などの事由が生じた日から60日を超えて日本に在留しようとする場合、事由が生じた日から30日以内に在留資格取得許可申請をするよう案内しています。

出生後の主な期限を整理すると次のようになります。

手続主な提出先原則的な期限・時期目的
出生届市区町村出生の日を含め14日以内出生の事実を届け出る
在留資格取得許可申請地方出入国在留管理官署出生から30日以内60日を超えて日本で暮らすための資格を求める
本国への出生登録大使館・領事館等国籍国の制度による本国側で出生・親子関係を登録する
旅券申請大使館・領事館等国籍国の制度による子どもの旅券を取得する

出生から60日以内に出国する場合は、在留資格取得許可申請が不要です。
しかし、出産直後は予定が変わることもあります。
「60日以内に帰国するつもりだから何もしない」と早い段階で決めつけず、実際の滞在予定を確認することが大切です。

また、出生届と在留資格取得許可申請のどちらを先に行うかについて、法律上必ず出生届が先と決められているわけではありません。
ただし、入管への申請では出生届受理証明書など、出生したことを証明する資料を求められます。
そのため、実務上は出生届を先に済ませると準備しやすくなります。

「14日以内の出生届」と「30日以内の在留資格取得許可申請」は提出先も目的も異なる手続きです。

子の在留資格

在留資格「家族滞在」は、一定の就労資格や留学などで在留する人の扶養を受ける配偶者・子を対象としています。
対象となる扶養者には特定技能2号が含まれますが、特定技能1号は含まれていません。

そのため、特定技能1号の両親の間に生まれた子どもについて、通常の家族滞在を当然に取得できるわけではありません。

もっとも、出入国在留管理庁の「特定技能制度に関するQ&A」では、特定技能1号は家族帯同が認められないと説明したうえで、例外として次のような人に「特定活動」が認められる場合があるとしています。

  • 日本で特定技能1号の人同士の間に生まれた子ども
  • 留学から特定技能1号へ変更する際、すでに家族滞在で日本にいる配偶者や子ども

これは特に人道上の配慮が必要な場合の取扱いです。

重要なのは、子どもに特定活動が必ず許可されると断定できる制度ではなく、家族の在留状況、扶養関係、生活の見通しなどを踏まえて個別に判断されるという点です。

「特定活動」は活動内容を法務大臣が個別に指定する在留資格です。
許可された場合は旅券に添付される指定書などで子どもに認められた活動内容や在留期間を確認します。

在留資格取得許可申請で確認する書類

在留資格取得許可申請では子どもが出生した事実、父母との関係、父母の在留状況、今後の扶養や生活の見通しなどを説明します。

具体的な必要書類は個別状況や提出先の案内によって異なりますが、一般に次のような書類を提出します。

  • 在留資格取得許可申請書
  • 出生届受理証明書など、子どもの出生を証明する資料
  • 子どもの住民票または住民票記載事項証明書
  • 父母の在留カードと旅券の写し
  • 父母の婚姻関係や子どもとの親子関係を示す資料
  • 父母の雇用契約や在職状況が分かる資料
  • 世帯の収入や扶養能力を示す資料
  • 住居や同居状況が分かる資料
  • 本国側の出生登録・旅券申請の状況が分かる資料
  • 必要に応じて事情を説明する文書

子どもの旅券が申請時点でまだ発行されていないこともあります。その場合に何を代わりに提出するか、後日どの資料を追加するかは、提出先の入管へ確認して進めます。
旅券がないことを理由に、30日の申請期限をそのまま過ぎないように注意が必要です。

父母の婚姻証明書や本国発行書類が外国語で作成されている場合は、日本語訳の添付を求められることがあります。
原本、写し、翻訳文のどれが必要かもあわせて確認します。

申請前のチェック項目

  • 父母双方の在留資格と在留期限
  • 子どもの出生年月日と出生場所
  • 父母の婚姻が本国でどのように登録されているか
  • 子どもが取得する国籍
  • 出生届の提出日と受理証明書の取得状況
  • 子どもの本国への出生登録と旅券申請の状況
  • 出産後も父母が日本で生活する予定期間
  • 子どもの生活費をどのように負担するか
  • 父母の産休・育休、復職、雇用継続の予定

受入れ企業・登録支援機関が確認すること


子どもの在留資格取得許可申請は、原則として家族側の手続です。しかし、特定技能1号の本人から妊娠・出産の報告を受けた会社や登録支援機関は、生活支援の場面で手続を手伝うことがあります。

このとき「特定技能1号は家族帯同不可だから、子どもは日本にいられない」と説明するのは適切ではありません。
一方で、「日本で生まれれば特定活動が必ず取れる」と約束することもできません。

会社側では少なくとも次の点を確認します。

  • 出生届や健康保険など、市区町村・勤務先で行う生活手続
  • 子どもの在留資格取得許可申請(出生から30日以内)
  • 本国大使館・領事館への出生登録と旅券申請
  • 父母それぞれの在留期限と更新時期
  • 会社名義の社宅に家族で住み続けられるか
  • 保育所、乳幼児健診、予防接種などの案内

母親が産前産後休業や育児休業を取得する場合は、1か月以上特定技能の活動ができない期間が生じるかを確認してください。
前回の記事で扱った、1か月以上の活動未実施に関する届出の対象になる可能性があります。
この点は子どもの在留資格取得許可申請とは別の手続です。
届出の具体的な要否は入管へ確認してから判断してください。

登録支援機関へ支援を委託している場合でも、企業側が出産の事実や本人の休業予定を共有しなければ、必要な手続きが遅れることがあります。
本人が理解できる言語で、期限と提出先を一覧にして伝えると抜けを防ぐことができます。

会社側の役割は在留資格の許可を保証することではありません。
本人が「どこへ・いつまでに・何をするか」を混同しないよう、情報を整理して伝えることです。

まとめ

特定技能1号の夫婦に日本で子どもが生まれた場合、出生届を提出するだけでは子どもの在留手続まで完了しません。

父母がともに外国籍であれば、子どもは日本で生まれたという理由だけで日本国籍を取得するわけではありません。
本国法に従った出生登録や旅券申請も確認する必要があります。

日本で60日を超えて生活する予定であれば、出生から30日以内に在留資格取得許可申請を行います。
市区町村への出生届は出生の日を含め14日以内であり、二つの手続は提出先も目的も異なります。

子どもの在留資格については、特定技能1号が家族滞在の扶養者に含まれていないため、家族滞在が当然に許可されるわけではありません。
一方、出入国在留管理庁は特定技能1号の人同士の間に日本で生まれた子どもについて、人道上の配慮から「特定活動」が認められる場合があると案内しています。

ただし、これは自動的な許可ではありません。
父母の在留状況、親子関係、扶養能力、今後の生活予定などを示し、個別の審査を受けます。

出生後は次の順番で整理すると手続の混同を防ぎやすくなります。

  1. 市区町村へ出生届を提出する
  2. 住民票や健康保険などの生活手続を確認する
  3. 本国への出生登録と旅券申請を確認する
  4. 出生から30日以内に在留資格取得許可申請を行う
  5. 許可後は在留資格、在留期間、指定書の内容を確認する

なお、必要書類や許可される在留資格は、父母の国籍、婚姻・親子関係、在留資格、生活状況などによって異なります。

参考情報

この記事に関連するページ

執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所