はじめに

外国人社員から「育児休業から復帰したいのですが、しばらく時短勤務にできますか」と申し出があったとき、会社としてはできる限り仕事と育児の両立を支えたいところです。

その一方で、担当者には別の心配も生じます。

「外国人にも日本人と同じ時短勤務制度を使えるのか」、「勤務時間や給与が減ると、在留資格の更新に影響するのではないか」、「特定技能や技能実習では、入管や機構への手続が必要なのか」

育児のための時短勤務と在留資格は、別々の制度です。
また、同じ外国人雇用でも「技術・人文知識・国際業務」、「特定技能」、「技能実習」では、働ける仕事や会社に求められる手続が異なります。

この記事では、松戸市周辺の企業を想定し、外国人が育児休業から時短勤務で復帰するときの注意点を、3つの在留資格に分けて整理します。

外国人も育児のための時短勤務制度の対象になり得る

外国人労働者にも日本の労働関係法令が適用されます。
国籍だけを理由に、育児休業や育児のための短時間勤務制度の対象外になるわけではありません。

厚生労働省は事業主に対し、3歳未満の子どもを養育する労働者が利用できる短時間勤務制度を設けるよう案内しており、一般的には1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む制度が想定されています。

ただし、実際に制度を利用できるかは、雇用期間や労使協定による対象外の範囲なども確認する必要があります。
まずは、日本人社員と同じように、会社の育児・介護休業規程と本人の雇用状況を照らし合わせます。

ここで注意したいのは、労務上、時短勤務を利用できることと、その働き方が在留資格や認定済みの計画に適合することは、別の確認だという点です。

会社は、次の順番で整理すると分かりやすくなります。

  1. 時短勤務制度の利用条件を満たしているか
  2. 本人の在留資格は何か
  3. 復帰後の仕事がその在留資格で認められるか
  4. 勤務時間や給与の変更について届出などが必要か

最初に在留資格と復帰後の働き方を確認する

「外国人社員」とひとまとめにせず、在留カード等で現在の在留資格と在留期限を確認し、そのうえで、育休前と復帰後の働き方を比較します。

少なくとも次の事項を確認しておくとよいでしょう。

  • 育児休業の終了日と復職日
  • 時短勤務の開始日と終了予定日
  • 1日の勤務時間と週の勤務日数
  • 育休前と復帰後の仕事内容
  • 基本給、手当、給与の計算方法
  • 就業場所
  • 雇用契約の変更内容
  • 在留期限と次回の更新時期

たとえば、次のようにまとめておきます。

  • 育児休業終了日:2026年10月31日
  • 職場復帰日:2026年11月1日
  • 時短勤務の予定期間:2026年11月1日から2027年10月31日まで
  • 所定労働時間:午前9時から午後4時まで
  • 復帰後の担当業務:育休前と同じ海外顧客対応と英文資料の作成

これはあくまで一例です。
実際の条件は、会社の制度、本人の希望、子どもの年齢、在留資格などに応じて決めます。

「当面の間短く働く」とだけ決めると、会社と本人の認識がずれやすくなります。
時短勤務の理由と期間を明確にし、書面と実際の勤務を一致させることが大切です。

技人国は復帰後の仕事内容も確認する

「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる技人国では、本人が実際に行う仕事の内容が重要です。

育休前に通訳、システム開発、設計、海外取引、経理などの専門業務を担当していた社員が、復帰後も同じ仕事を続け、育児のために一定期間だけ勤務時間を短くするケースがあります。

この場合、時短勤務になったという事実だけで、直ちに技人国の活動から外れるとは断定できません。

一方で、復帰を機に専門業務から外れ、梱包、清掃、単純な製造作業などが仕事の中心になると、勤務時間とは別に、技人国で認められる活動かという問題が生じます。

以上から会社は次の点を確認します。

  • 復帰後も専門的な仕事が中心になっているか
  • 本人の学歴や職歴と仕事との関連性が変わっていないか
  • 時短のために外す仕事と、新たに担当する仕事は何か
  • 契約書の職務内容と実際の仕事が一致しているか
  • 給与の変更理由を説明できるか

技人国では、日本人が同じ仕事をする場合と同等額以上の報酬を受けることも基準の一つです。
時短に伴い月給を変更するときは、月額だけでなく、時間単価、職務、責任の範囲、日本人の時短勤務者の取扱いを含めて確認します。

特定技能は雇用契約・届出・支援を分けて確認する

特定技能外国人が時短勤務で復帰する場合は、仕事内容だけでなく、特定技能雇用契約や受入れ機関の届出も確認します。

特定技能では外国人が特定産業分野に定められた業務へ従事することを前提としているため、復帰後も本人の在留資格で認められた分野と業務の範囲内で働く必要があります。

また、勤務時間、給与その他の条件を変えるときは、その変更が特定技能雇用契約の変更に当たり、届出が必要になるかを確認します。

出入国在留管理庁は、特定技能雇用契約を変更した場合の届出を案内している一方、変更内容によっては届出不要とされる取扱いもあるため、「時短にしたら必ず届出が必要」「育児目的なら届出は不要」と一律に決めることはできません。

さらに、妊娠・出産・育児のための休業などにより、特定技能外国人が1か月以上活動できない事情が生じた場合は、受入れ困難に係る届出が関係します。
復帰して実際に働き始めた後の時短勤務と、育休中で活動できない期間は分けて整理します。

特定技能1号については、産前産後休業・育児休業中も在留資格は継続します。
一定の手続と条件のもとで、これらの休業期間を5年の通算在留期間に含めない取扱いが規定されており、利用を考える場合は申請時期や疎明資料を確認する必要があります。

1号特定技能外国人については、復帰後の生活状況も確認します。
保育、通院、勤務時間の変更によって困っていることがないかを定期面談などで把握し、支援の実施状況を記録します。

技能実習は認定済みの実習計画との整合性を確認する

技能実習生の場合、通常の雇用管理に加えて、認定を受けた技能実習計画に沿って実習を行う必要があります。

外国人技能実習機構は、妊娠や出産を理由に技能実習を一方的に終了させたり、解雇などの不利益な取扱いをしたりしてはならないと案内しています。

産前産後休業などにより技能実習を続けられず、実習を中断する場合には、技能実習実施困難時届出書などの手続が関係します。
また、やむを得ない理由で中断した技能実習を再開するための手続も設けられています。

育休から時短勤務で復帰する場合は次の点を確認します。

  • 認定済みの技能実習計画に記載された実習時間と合っているか
  • 時短後も予定していた技能等を修得できる実習内容になっているか
  • 実習期間内に計画した目標を達成できるか
  • 実習時間や実習内容の変更について計画変更の手続が必要か
  • 中断や再開に関する手続が完了しているか
  • 団体監理型の場合、監理団体と情報を共有しているか

外国人技能実習機構は認定済みの計画を変更する場合、変更の程度に応じて、変更認定申請、軽微変更届出、または届出不要のいずれかになると案内しています。

時短勤務がどの手続に当たるかは、変更する実習時間、内容、期間などによって異なります。
公開情報だけで個別の手続を断定せず、変更前に計画との違いを整理することが重要です。

給与・契約書・給付金を実際の働き方に合わせる


在留資格にかかわらず、勤務時間や給与を変更したのに、雇用契約書や労働条件通知書だけが育休前のままになっている状態は避けたいところです。

会社の制度と変更方法に応じて、次の資料を整えます。

  • 育児休業の取得期間が分かる資料
  • 復職日が分かる資料
  • 育児短時間勤務の申出書と承認書
  • 変更後の勤務時間と給与が分かる書面
  • 復帰後の職務・実習内容が分かる資料
  • 給与台帳や給与明細
  • 時短勤務の終了予定日が分かる資料
  • 各制度で行った届出や計画変更の控え

本人に説明した条件、実際の勤務、給与台帳、在留手続や実習計画の内容を一致させることが大切です。

また、2025年4月からは、一定の要件を満たす人を対象に「育児時短就業給付金」が始まっています。
これは、2歳未満の子どもを養育するために時短勤務を行い、賃金が低下した場合に利用を検討する雇用保険の給付です。

厚生労働省は、原則として時短勤務中に支払われた各月の賃金額の10%を支給すると案内しています。
ただし、時短前の賃金との比較や支給限度額などによる調整があるため、常に賃金の10%がそのまま支給されるわけではありません。

この給付を受けられるかという雇用保険上の判断と、在留資格・特定技能の届出・技能実習計画の判断は別ですので、それぞれの制度を分けて確認します。

復帰前に会社が確認したいチェックリスト

育休からの復帰が決まった段階で、次の項目を順番に確認します。

  • 在留カードで現在の在留資格と在留期限を確認した
  • 育児休業の終了日と復職日を確認した
  • 時短勤務の開始日と終了予定日を決めた
  • 1日の勤務時間と週の勤務日数を明確にした
  • 育休前と復帰後の仕事内容を比較した
  • 給与と手当の計算方法を本人へ説明した
  • 日本人社員と比べて不合理に不利な取扱いになっていない
  • 労働条件を示す書面を実態に合わせた
  • 技人国の場合、復帰後も専門業務が中心か確認した
  • 特定技能の場合、雇用契約変更や受入れ困難の届出を確認した
  • 特定技能1号の場合、支援と定期面談の記録を確認した
  • 技能実習の場合、実習計画変更や中断・再開手続を確認した
  • 次回の在留期間更新時期を会社と本人で共有した
  • 復職、時短勤務、届出に関する資料を保管した

この確認は、在留資格のためだけに行うものではなく、復帰後の「聞いていた条件と違う」という行き違いを防ぎ、本人が安心して働き続けるためにも役立ちます。

まとめ

外国人が育児休業から時短勤務で復帰する場合、外国人だからという理由だけで時短勤務制度の対象外になるわけではありません。

一方、労務上の制度を利用できることと在留資格や認定済みの計画に問題がないことは、同じ判断ではありません。

技人国では、復帰後も専門的な仕事内容が中心かを確認します。
特定技能では、分野別の業務、雇用契約変更、受入れ困難の届出、1号特定技能外国人への支援を確認します。
技能実習では、認定済みの実習計画との整合性や、中断・再開、計画変更の手続を確認します。

3つの制度に共通する確認点は次のとおりです。

  1. 本人の在留資格と在留期限
  2. 復帰後の仕事内容
  3. 時短勤務の時間と予定期間
  4. 給与と手当の計算方法
  5. 契約書類と実際の勤務の一致
  6. 制度ごとに必要となる届出や計画変更
  7. 復帰と変更の経緯を示す資料の保管

時短勤務になったという事実だけから、在留資格の更新結果や必要な届出を一律に判断することはできません。
まず在留資格を確認し、復帰前後で何が変わるのかを整理することが会社と外国人本人の双方を守る準備になります。

参考情報

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所