はじめに

「人柄もよく、日本語での受け答えにも問題がない。卒業後は、ぜひ正社員として働いてもらいたい」

外国人留学生の採用を考える会社にとって、これはうれしい出会いです。

一方、内定を出した後に次のような疑問が出てくることがあります。

  • 今持っている「留学」の在留資格のまま働けるのか
  • 大学や専門学校で学んだ内容と、入社後の仕事に関連性が必要なのか
  • いつから申請準備を始めればよいのか
  • 会社はどんな書類を用意するのか

先に結論をお伝えすると、留学生を正社員として採用する場合は「留学」から就労できる在留資格への変更が必要です。

ただし正社員であれば良いというわけではなく、本人の学歴や経歴、実際に担当する仕事内容、雇用条件、会社の事業内容などを踏まえて審査されます。

この記事では留学生の正社員採用を検討している会社に向けて、内定後に慌てないための確認ポイントを順番に説明します。

在留カードを確認する

まず、本人の在留カードで次の項目を確認します。

  • 氏名と生年月日
  • 現在の在留資格
  • 在留期間の満了日
  • 就労制限の有無
  • 資格外活動許可欄

在留カードを確認する際は入管の「在留カード等読取アプリケーション」が便利です。
読み取った情報と在留カードの情報が同じであるか確認することで、不法就労助長などの犯罪に巻き込まれることを防ぐことができます。

卒業予定日と取得予定の学位・称号を確認する

次に卒業予定日と卒業によって取得する学位や称号を確認します。

大学、大学院、短期大学、専門学校など、在籍する教育機関によって確認するポイントが異なります。専門学校の場合は学科名だけでなく、履修内容や取得予定の称号も確認しておくと検討がしやすくなります。

「学校を卒業する予定だから大丈夫」と考えるのではなく、次の資料を確認しましょう。

  • 卒業見込証明書
  • 成績証明書
  • 履修科目が分かる資料
  • 卒業時に取得する学位・称号が分かる資料

海外の大学や職歴を基準に採用する場合は、その卒業証明書や在職証明書などが必要になる場合があります。

学歴・経歴と業務に関連があるか

ここが留学生採用で特に重要なポイントです。

たとえば情報工学を学んだ人にシステム開発を任せる場合は学んだ内容と仕事の関係を説明しやすいでしょう。
一方で、学んだ内容と業務内容の関連性が疑われる場合は、履修科目や本人の経歴を詳しく確認する必要があります。

特に専門学校を卒業後に「技術・人文知識・国際業務」で採用する場合、学んだ内容と仕事との関連性がより厳しく審査されます。

会社は次の質問に具体的に答えられるか確認してください。

  1. 入社後、最初の6か月に何を担当してもらうか
  2. その仕事で、どのような専門知識を使うか
  3. 学校で学んだ内容や過去の職歴が、仕事にどう生かされるか
  4. 一日のうち、それぞれの業務にどの程度の時間を使うか

「会社のさまざまな仕事を担当してもらう予定です」という説明では、実際の職務が伝わりません。誰に、何を、どのような方法で提供する仕事なのかまで言葉にすることが必要です。

求人票、雇用契約書、実際の仕事内容に矛盾がないか

採用活動では、求人票、人事担当者の説明、配属予定部署の認識が少しずつずれることがあります。

たとえば、求人票には「海外営業」と書かれているものの、配属後しばらくは倉庫作業だけを担当する予定だったという状態です。

ここで大切なのは申請用に書類を整えることではなく、実際の業務内容を確認し、その内容を求人票や雇用契約書などへ正しく反映することです。

書類を偽造した場合、外国人は日本で働けなくなり、企業も今後外国人を雇うことが難しくなる可能性があるので絶対にやめましょう。

雇用を検討するにあたり注意するポイントは以下の通りです。

  • 主とする業務
  • 付随して行う業務
  • 配属先と勤務場所
  • 入社後の研修内容
  • 日本人との給料差

給料は合理的に説明できる額か

例えば「技術・人文知識・国際業務」の場合、日本人と同等額以上の報酬を受けることが要件の一つです。
外国人だからという理由で基本給を低く設定することは適切ではありません。

なお、報酬以外にも労働時間、休日、勤務地、契約期間などの労働条件を本人が理解できるように説明することも重要です。

内定から就労開始までの進め方

STEP1 採用を決める前に仕事内容を整理する

面接の段階で、本人の専攻・履修内容・職歴と、会社が任せたい仕事を確認します。

この時点ですべての申請書類をそろえる必要はありませんが、仕事内容との関連に疑問がある場合は内定後まで先送りしないほうがよいでしょう。

STEP2 本人と会社が用意する書類を整理する

本人側は一般にパスポート、在留カード、学歴や経歴を証明する資料などを準備し、会社側は雇用条件や仕事内容、会社の事業内容などを説明する資料を準備します。

必要書類は申請する在留資格、本人の経歴、会社の区分、出入国在留管理庁の取扱いなどによって異なりますので、最新の入管情報を確認してください。

STEP3 在留資格変更許可申請を行う

「留学」から、予定する仕事に対応した在留資格へ変更します。
申請を出しただけでは変更後の仕事を始めることはできませんので注意してください。

スムーズな変更のためにも卒業式や入社日から逆算し、本人、学校、会社担当者でスケジュールを共有しておくことが大切です。

STEP4 許可後に在留カードと雇用条件を再確認する

許可を受けたら、新しい在留カードの在留資格や在留期間を確認します。
会社が予定していた仕事内容や勤務場所に変更がないかも、入社前にもう一度確認しましょう。

申請時と実際の配属内容が変わった場合は、そのまま判断せず、変更後の仕事が在留資格の範囲に含まれるかを確認する必要があります。

会社と本人の確認事項を分けておく

本人確認事項

  • 在留カードとパスポートの有効状況
  • 卒業予定日
  • 学位・称号、専攻、履修科目
  • 海外を含む過去の学歴職歴
  • 過去の在留資格申請歴

会社確認事項

  • 雇用契約の内容
  • 配属先と具体的な仕事内容
  • 採用理由と本人の知識・経験を生かす場面
  • 会社の事業内容
  • 同じ仕事をする日本人社員との報酬の比較

過去の申請内容や本人の経歴に不明な点がある場合は、本人の説明だけで断定せず、証拠書類で裏を取りましょう。
不安が残れば専門家へ伝えたほうが安心して手続きを進めることができます。

「採用してから相談」では遅い

留学生の採用で避けたいのは、内定通知を出し、配属先と入社日も決めた後に仕事内容と本人の専攻との関係が問題になることです。

その段階で職務内容を大きく変えれば、現場の人員計画にも影響しますし、本人も「予定どおり働けるのだろうか」と不安になります。

重複しますが、大切なのは本人が学んだことと会社で任せる業務内容に関連性があるかということとそれらを書面で立証できるかということです。

これらの点に注意すれば会社は採用判断と申請準備を分けずに進められ、本人も仕事内容を理解したうえで入社を決める材料になります。

行政書士に相談できること

行政書士には外国人採用に関して次のような相談ができます。

  • 本人の学歴・職歴と予定する仕事内容の関連性の判断
  • 申請する在留資格の検討
  • 会社と本人が準備する資料の整理
  • 仕事内容を説明する書類の作成支援
  • 申請書類の作成や、申請取次の範囲での手続支援

個人での判断が難しい場合はお近くの専門家にご相談することをお勧めします。

まとめ

外国人留学生を正社員として採用するときは、「日本語が話せる」、「日本人と給料が同じ」、「正社員として雇う」という事情だけで判断することはできません。

採用前に確認したいのは、主に次の5点です。

  1. 現在の在留資格と在留期限
  2. 卒業予定日と取得予定の学位・称号
  3. 専攻・経歴と入社後の仕事内容の関連性
  4. 求人票、雇用契約書、実際の配属内容に矛盾がないか
  5. 日本人と同等以上の報酬であるか

採用したい人が見つかってから入社日までの時間は思っているほど長くありませんので、採用を検討している段階から準備を進めましょう。

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参考情報

執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所