はじめに

技能実習を終えた外国人が同じ会社で特定技能1号として働き続ける場合があります。
その際、技能実習中に使用していた寮をそのまま利用するケースは珍しくありません。

住む場所も家賃も変わらなければ、会社側は「技能実習のときと同じ条件だから改めて確認する必要はない」と考えてしまいがちです。
しかし、在留資格を変更するときは特定技能の雇用条件や支援計画に合わせて、住居の内容と本人が負担する費用を改めて確認する必要があります。

特に確認したいのは家賃の金額だけではありません。
家具・家電代、水道光熱費、保険料などが家賃に含まれているのか、別に徴収するのかによって説明する内容も変わります。

この記事では技能実習から特定技能へ移行した外国人が同じ寮に住み続ける場合に、受入れ企業が確認したい事項を順番に整理します。

同じ寮に住み続ける場合でも条件の再確認が必要

技能実習から特定技能へ移行しても本人が希望し、住居として適切であればこれまでの寮を引き続き使用することが考えられます。

出入国在留管理庁の運用要領では1号特定技能外国人の居室について、原則として1人当たり7.5平方メートル以上を確保することが示されています。
一方、技能実習2号などから特定技能1号へ変更し、特定技能所属機関がすでに確保している社宅等への居住を本人が希望する場合にはこの取扱いの例外が示されています。

ただし、この例外は「今までと同じ寮なら、広さや費用を確認しなくてよい」という意味ではありません。
少なくとも、次の内容は現在の状況に合わせて確認しておきます。

  • 寮の所在地と所有者または賃貸人
  • 部屋の広さと実際の入居人数
  • 本人が毎月負担する家賃
  • 家賃以外に負担する費用
  • 費用の計算根拠
  • 給与から控除する費目と金額
  • 本人が条件を理解し、同意していること

技能実習の申請時に提出した資料が残っていても、入居人数や実際の賃料が変わっている可能性があります。
以前の資料をそのまま転用せず、特定技能への変更時点の事実と一致しているかを確認することが大切です。

技能実習時と特定技能移行後の契約を分けて確認する

同じ会社、同じ寮、同じ金額であっても、技能実習時の説明だけで問題ないと判断するのは危険です。

まず、技能実習時に作成した「技能実習生の報酬・宿泊施設・徴収費用についての説明書」などを確認し、そのうえで特定技能雇用契約書、雇用条件書、1号特定技能外国人支援計画書に記載する内容と照合します。

確認するときは、次のように資料を並べると食い違いを見つけやすくなります。

確認する資料主な確認事項
技能実習時の徴収費用の説明書以前説明した家賃、光熱費、その他の費用
物件の賃貸借契約書会社が負担する実際の賃料、管理費、契約期間
寮・社宅の使用契約書本人が負担する金額、使用条件、退去時の取扱い
特定技能の雇用条件書給与から控除する項目と見込額
1号特定技能外国人支援計画書住居確保に関して実施する支援の内容

書類によって家賃や入居人数が異なっていると、どの情報が正しいのか説明が必要になります。
変更があった場合は古い数字を消すだけではなく、「いつ、何が、なぜ変わったのか」を記録しておくと整理しやすくなります。

家賃は実費と入居人数を基に整理する

借り上げたアパートや一戸建てを寮として提供する場合は、会社が実際に負担している賃料を確認した上で誰が何人住んでいるのかを確認し、本人の負担額を計算します。

例えば、会社が月額9万円で借りている住居に3人が同じ条件で入居している場合、単純に均等負担とするなら、1人当たりの金額は3万円です。
ただし、個室の広さや利用条件が異なる場合まで必ず均等にすればよいというわけではなく、実際の使用状況に合った説明が必要です。

反対に、会社の家賃負担が月額9万円であるにもかかわらず3人からそれぞれ4万円ずつ徴収するような場合は、実費との合理性を説明できません。

会社が所有する物件を寮として使う場合は近隣相場だけで金額を決めるのではなく、建設・取得・改修に要した費用、耐用年数、入居人数などを踏まえて、なぜその金額になるのかを説明できる資料を整えます。

ここで重要なのは、全国共通の「適正家賃」が決まっているわけではないことです。
物件の契約内容、会社の実費、入居人数、本人が使用できる範囲などの条件によって変わるため、金額だけを見て適否を判断することはできません。

家具・家電代、保険料、水道光熱費を家賃と混同しない

寮には、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、ベッド、テーブルなどが備え付けられていることがあります。
これらの費用を本人から毎月徴収する場合は「家具代込みの家賃」とだけ説明するのではなく、何の費用なのかを分解して整理します。

出入国在留管理庁の運用要領では、居住費のほか、生活に必要な家具・家電、保険などの費用を定期的に徴収する場合、本人がその内容を理解して合意していること、実費の範囲内であること、備品の耐用年数や利用人数などを考慮した合理的な金額であることが示されています。

確認表は、次のように費目を分けると分かりやすくなります。

費目確認する内容
家賃会社が実際に支払う賃料と入居人数
管理費・共益費賃貸借契約上の金額と本人の負担割合
家具・家電代購入額、購入時期、耐用年数、利用人数
水道光熱費実際の請求額、対象期間、利用人数
Wi-Fi代契約料金と利用人数
保険料保険の名称、補償内容、実際の保険料

会社が以前購入した家具を購入額の全額に近い金額で何年も徴収し続ければ、実費との関係が分かりにくくなります。
いつ購入した物か、誰が何人で利用するのか、いつまで徴収するのかを確認しておく必要があります。

また、故障や入居者の交代があったときの取扱いも決めておくと後のトラブルを防ぎやすくなります。

給与から寮費を控除する前に本人へ説明する

労働基準法では賃金を全額支払うことが原則です。
税金や社会保険料など法令で認められたもの以外を給与から控除する場合は、労働者の過半数代表者などとの書面による労使協定が必要です。
厚生労働省は社宅や寮の費用についても、この賃金控除に関する取扱いを案内しています。

労使協定を作成しているだけで本人への説明を省いてよいわけではありません。
少なくとも次の内容を本人が理解できる言語または方法で説明します。

  • 毎月いくら控除されるのか
  • 家賃、光熱費、家具代などの内訳
  • 実費が変動する費用の精算方法
  • 入退寮の月に日割り計算をするのか
  • 退去時に負担する可能性がある費用
  • 給与明細のどの項目に表示されるのか

説明後は署名だけもらうのではなく、本人へ説明した資料の写しも渡しておくとトラブルにつながる可能性を減らすことができます。

住居費と義務的支援に必要な費用を区別する


特定技能1号の受入れ企業は、本人が日本で安定して生活できるよう1号特定技能外国人支援計画を作成し、住居確保や生活に必要な契約などの支援を行います。
支援の全部を登録支援機関へ委託することも可能です。

ここで注意したいのが本人が利用する住居そのものの家賃と、義務的支援を実施するための費用は別だという点です。

例えば本人が実際に使用する部屋の家賃や、本人が使用した水道光熱費を合理的な範囲で負担してもらうことと、次のような費用を本人へ転嫁することを同じく考えてはいけません。

  • 登録支援機関へ支払う支援委託料
  • 支援担当者の人件費
  • 義務的支援のための通訳費用
  • 支援計画を作成・実施するための事務費用

特定技能外国人受入れに関する運用要領では、義務的支援に必要な費用には登録支援機関への委託費用も含まれると説明されています。
名称だけを「管理費」や「寮費」と変えて本人から徴収することのないよう、費目の中身を確認する必要があります。

申請時と入居後に残しておきたい資料

家賃の金額が合理的であっても、その根拠を説明できなければ申請時や後日の確認に時間がかかります。
技能実習から特定技能へ移行するときは、少なくとも次の資料を一つのまとまりとして保管しておくと確認しやすくなります。

  • 寮・社宅の賃貸借契約書または所有関係が分かる資料
  • 間取り図と本人が使用する部屋が分かる資料
  • 現在の入居者一覧
  • 家賃の一人当たり負担額を示す計算表
  • 管理費・共益費・水道光熱費の請求書
  • 家具・家電の購入額、購入時期、利用人数を示す一覧
  • 本人へ交付した費用説明書
  • 寮・社宅の使用契約書または入居同意書
  • 賃金控除に関する労使協定
  • 寮費が表示された給与明細

入居者が増減した場合や、賃貸借契約の更新で家賃が変わった場合は計算表も更新します。
特定技能への変更申請が終わった時点で管理を止めず、実際に徴収している金額と説明資料が一致しているかを定期的に確認することが重要です。

まとめ

技能実習から特定技能へ移行した外国人が同じ寮に住み続ける場合でも技能実習時の条件をそのまま引き継げばよいとは限りません。

確認したいのは現在の家賃、入居人数、部屋の広さ、家具・家電、水道光熱費などの内訳です。
借上物件では会社が負担する実際の賃料、会社所有物件では取得・改修費や耐用年数などを基に本人の負担額を説明できるようにします。

また、給与から寮費を控除する場合の労使協定と本人への説明、住居費と義務的支援費用の区別も欠かせません。

「以前から同じ寮に住んでいるから」という理由だけで説明を省略せず、特定技能への移行時点で資料と実態を照合することが申請時の追加確認や入居後の費用トラブルを防ぐことにつながります。

参考情報

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所