はじめに

外国人の同性パートナーと日本で暮らしたい方で東京都のパートナーシップ宣誓制度について知る方もいるでしょう。

東京都から受理証明書が交付されるなら、外国人パートナーの在留資格にも利用できるのではないかと考えるのは自然なことです。

しかし、パートナーシップ宣誓制度と在留資格はそれぞれ目的と判断する行政機関が異なる制度です。
受理証明書を取得した事実のみをもって、外国人パートナーに在留資格が与えられる仕組みではありません。

一方で、受理証明書が二人の関係について東京都へ宣誓・届出をしたことを示す資料であることも事実です。

では、在留資格の手続ではどのように考えればよいのでしょうか。

この記事では外国人の同性パートナーと暮らすことを考えている方に向けて、東京都のパートナーシップ宣誓制度の法的な位置づけと在留資格との関係を分けて説明します。

東京都パートナーシップ宣誓制度とは

東京都のパートナーシップ宣誓制度は、双方またはいずれか一方が性的マイノリティである二人からパートナーシップ関係にあることの宣誓・届出があったことを東京都知事が証明する制度です。

東京都は制度の目的を「当事者が日常生活で抱える困りごとの軽減や、暮らしやすい環境づくりにつなげること」と説明しています。

対象となるには東京都が定める要件をすべて満たす必要があります。主な要件は次のとおりです。

  • 双方またはいずれか一方が性的マイノリティであること
  • 双方が成年であること
  • 双方に配偶者や他のパートナーがいないこと
  • 一定の近親者関係にないこと
  • 双方またはいずれか一方が、都内在住・在勤・在学であること

東京都の案内では要件を満たせば国籍は問わないとされています。
そのため日本人と外国人のカップルや、外国人同士のカップルも要件を満たせば制度を利用できます。

手続は原則としてオンラインで行われ、不備のない届出が受理されると受理証明書が交付されます。

葛飾区に住んでいる二人も利用できる

葛飾区は東京都パートナーシップ宣誓制度の受理証明書を活用できる区の事業を案内しています。

葛飾区に住んでいることを理由に東京都の制度から除外されるわけではありません。
双方またはいずれか一方が東京都内に住んでいる、働いている、または学校へ通っているなど、東京都が定める条件を満たしているかを確認します。

制度の利用後は、受理証明書を都や区の一部の事業、民間サービスなどで利用できることがあります。
ただし、利用できるサービスや条件はそれぞれ異なります。

たとえば東京都は受理証明書の活用例として、福利厚生、賃貸物件の紹介、医療機関での面会、携帯電話の家族割引、保険、住宅ローンなどを挙げています。

これらは婚姻と同じ法律上の効果が発生しているからではなく、行政機関や事業者が制度の趣旨を踏まえてそれぞれのサービスで受理証明書を活用しているものです。

受理証明書は婚姻証明書ではない

在留資格との関係を考えるうえで最も重要なのがこの違いです。

東京都はパートナーシップの宣誓について、「法律行為である婚姻とは異なり、宣誓によって法律上の効果を生じさせるものではない」と明記しています。

つまり、受理証明書が交付されても法律上の婚姻が成立するわけではありません。

次の二つは別の資料です。

資料示す内容
東京都パートナーシップ宣誓制度の受理証明書二人からパートナーシップ関係について宣誓・届出があり、東京都が受理したこと
外国の官公署などが発行した婚姻証明書その国・地域の法令に基づいて婚姻が成立したこと

海外で同性婚が成立している二人が、東京都のパートナーシップ宣誓制度も利用することは考えられます。
しかし、受理証明書を取得したことと外国で同性婚が法的に成立していることは同じではありません。

受理証明書だけで在留資格を取得できるわけではない

日本で中長期間暮らす外国人には、その人が日本で行う活動や身分関係などに応じた在留資格が必要です。

東京都パートナーシップ宣誓制度は、出入国在留管理庁が行う在留資格の許可制度でないことはこれまでの説明でわかると思います。
東京都の公式案内にも、受理証明書を取得すれば特定の在留資格が与えられるという記載は確認できません。

したがって、次の点を誤解しないようにする必要があります。

  • 受理証明書があれば「日本人の配偶者等」を取得できる
  • 宣誓した二人は法律上の配偶者として扱われる
  • 受理証明書を提出すれば「特定活動」が必ず許可される
  • 東京都が関係を認めたため、入管審査でも同じく認められる

パートナーシップ宣誓制度の受理と、在留資格の許可は判断の目的も根拠も異なることに注意してください。

在留資格の検討では国籍の組み合わせが重要?

同性パートナーの在留資格を考えるときは、少なくとも次の組み合わせを分ける必要があります。

日本人と外国人のカップル

外国で同性婚が有効に成立していても、在留資格「日本人の配偶者等」に該当するとは扱われていません。

過去には、日本人の同性パートナーである外国人について、在留資格「特定活動」が争われた裁判例や、個別に在留が認められたと紹介される事例があります。

ただし、これらを理由に「外国で同性婚をしていれば特定活動が認められる」と判断することはできません。
告示にあらかじめ定められていない特定活動は、個別事情に基づいて判断されるからです。

外国人同士のカップル

双方が外国人の場合は、一方が日本で一定の在留資格を持ち、その同性配偶者について「特定活動」が付与された事例があります。

ですがこの場合も、パートナーシップ宣誓をした事実だけで決まるわけではありません。
外国で婚姻が有効に成立しているか、当事者それぞれの本国で婚姻がどのように扱われるか、日本に在留するパートナーがどの在留資格を持っているかなど、個別の確認が必要です。

受理証明書は在留手続で意味がないのか


「在留資格を直接取得できないなら、受理証明書には意味がないのか」と疑問に思うかもしれません。

受理証明書には、二人が東京都へパートナーシップ関係を宣誓・届出し、それが受理されたことが記載されます。
そのため、二人の関係や日本での生活状況を説明する際の一資料として提出を検討する余地はあります。

ただし、出入国在留管理庁が同性パートナーの在留資格を判断する際、東京都の受理証明書をどの程度評価するのかについて、一般に適用される明確な審査基準は確認できません。

したがって、「パートナーシップ宣誓をした事実を示す資料」としての性質と、「在留資格を許可するための要件」は分けて考える必要があります。

在留資格を考える前に整理したいこと

外国人の同性パートナーと日本で暮らす方法を考える場合、受理証明書の有無だけでなく、次の事項を整理します。

二人の国籍

日本人と外国人のカップルなのか、双方が外国人なのかを確認します。双方が外国人の場合は、それぞれの国籍も重要です。

海外での婚姻の有無

どの国・地域で、いつ婚姻が成立したのかを確認します。
婚姻証明書がある場合は、発行機関や記載内容、日本語訳も確認します。

外国人パートナーの現在の在留状況

外国人パートナーが海外にいるのか、日本にいるのかを確認します。
日本にいる場合は、現在の在留資格と在留期限も整理します。

日本での生活予定

どこに住むのか、生活費をどうやって捻出するのか、どの程度の期間日本で暮らす予定なのかを整理します。

二人の関係を示す資料

婚姻証明書、同居の記録、二人の交流経緯など、何を用意できるかを確認します。
ただし、必要資料は申請の種類や個別事情で変わります。

東京都パートナーシップ宣誓制度を利用するときの注意点

東京都パートナーシップ宣誓制度を利用するときは以下の点に注意してください。

  • 制度の対象要件をすべて満たしているか
  • 外国語で作成された書類に日本語訳が必要か
  • 現在の住所、勤務先または学校が要件に関係するか
  • 受理証明書を使いたいサービスが活用先一覧に含まれているか
  • サービスごとに追加の利用条件がないか

制度や活用先は更新される可能性があります。手続前には最新の案内を確認してください。

まとめ

東京都パートナーシップ宣誓制度は、東京都が二人からパートナーシップ関係について宣誓・届出を受け、それを受理したことを証明する制度です。

一方、受理証明書は婚姻証明書ではなく、宣誓によって婚姻と同じ法律上の効果が生じるものでもありません。
そのため、受理証明書を取得しただけで、外国人パートナーが「日本人の配偶者等」や「特定活動」などの在留資格を取得できるとはいえません。

在留手続で二人の関係や日本での生活状況を説明する資料の一つとして検討する余地はありますが、審査上どう評価されるかや必要性については現時点で断定することはできません。

パートナーシップ宣誓の有無だけでなく、二人の国籍、海外での婚姻の成立、外国人パートナーの現在の在留状況、日本での生活予定を分けて整理することが重要です。

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所