はじめに

特定技能外国人を初めて受け入れる会社からすると、事前ガイダンスは負担の大きい業務に見えるかもしれません。

説明する項目は多く、外国人本人が理解できる言語で説明する必要があります。
そのため通訳担当者が毎回同じ内容を説明し、そのたびに長時間拘束されるのが現状です。

そこで、説明資料を渡すだけにしたり、録画した動画に置き換えたりできないかと考える方もいるでしょう。
運用要領上では、事前ガイダンスは対面またはテレビ電話などにより、本人であることを確認したうえで実施するとされており、文書の郵送や電子メールの送信だけで終わらせることはできません。

あくまで事前ガイダンスの目的は、決められた文章を読み上げることではなく、外国人本人が仕事内容や賃金、日本での生活、受けられる支援などを理解し、分からない点を確認できる状態にすることです。

説明したつもりでも、本人が「手取り額だと思っていた」「寮費は会社が負担すると思っていた」「勤務地が変わるとは聞いていない」と受け取っていれば、入社後の不信感につながります。

この記事では、松戸市で1号特定技能外国人を受け入れる会社に向けて、事前ガイダンスの位置づけ、実施前の準備、当日の進め方、専門家や登録支援機関へ相談する意味を分かりやすく説明します。

事前ガイダンスはいつ行うのか

事前ガイダンスは、1号特定技能外国人に対して行う義務的支援の一つです。

運用要領によれば事前ガイダンスの実施は特定技能雇用契約の締結時以前に行うことが望ましいとの記載があります。

採用面接の途中で労働条件を説明していても、それだけで事前ガイダンスが完了したと考えるのは危険です。
契約前には、勤務地、給与、住居、支援方法などが確定していないことがあるからです。

受入れ企業が自社で支援を行う場合は会社が事前ガイダンスを実施し、登録支援機関へ委託する場合はその登録支援機関が実施します。

なお、「人材紹介会社が説明してくれたから大丈夫」とは限りません。
最終的に外国人がガイダンスの内容を理解しているかが重要になります。

実施前に雇用条件と支援内容を確定させる

事前ガイダンスを始め前に、何をどう伝えるか整理します。

仕事内容、勤務場所、勤務時間、休日、報酬、控除される費用、住居、入国時の送迎、相談窓口などが曖昧なままでは、通訳担当者も正確に説明できません。

特に注意したいのが、「求人票」「雇用契約書」「支援計画」「本人への口頭説明」の内容がずれている状態です。

たとえば、求人票には松戸市内の事業所勤務と書いてあるのに、面接では近隣市への異動があると説明していた場合、本人がどこまで理解しているか分かりません。
また、基本給とは別に固定残業代が含まれる場合や、社宅費・水道光熱費を給与から控除する場合も、金額と仕組みを分けて説明する必要があります。

本当に理解しているか適宜質問時間を設けることも大切です。

本人が十分に理解できる言語で説明する

事前ガイダンスは、特定技能外国人が十分に理解できる言語で行います。
ここでいう「理解できる」とは、給与の控除、契約解除、在留手続、保証金、相談窓口など、普段あまり使わない言葉の意味まで理解できる必要があります。

通訳を入れる場合は、当日になって日本語の資料をその場で訳してもらうだけでは負担が大きくなりますので、事前に次の資料を共有しておくと説明のズレを減らせます。

  • 雇用契約書と労働条件通知書
  • 実際に担当する仕事内容
  • 給与から控除される費用
  • 住居と通勤方法
  • 支援担当者と相談窓口
  • 当日に使用する説明資料

専門用語を直訳しても、意味が伝わらないことがあります。
説明後には、単に「分かりましたか」と聞くだけではなく、「毎月の給与から何が引かれますか」「困ったときは誰に相談しますか」のように、本人の言葉で答えてもらう方法が有効です。

本人の立場に置き換えて説明

事前ガイダンスでは、仕事内容や労働条件のほか、日本で行える活動、入国・在留の手続、保証金や違約金に関すること、受けられる支援など、複数の事項を説明します。

必要な説明項目は、出入国在留管理庁の最新の運用要領と「事前ガイダンスの確認書」を基に整理してください。

項目を読み上げるだけでは本人が自分の生活に置き換えにくいことがありますので、次のように実際の場面を添えると理解しやすくなります。

例えば「相談窓口があります」と説明するだけでなく、仕事の指示が分からないとき、給料の内容に疑問があるとき、病院へ行きたいときに、誰へどの方法で相談するのかを伝えます。
他には住居から勤務先までの経路、最寄り駅、早朝・深夜勤務時の移動方法も確認します。

松戸市は、外国人向け生活ガイドを複数の言語で公開し、市役所に多言語の外国人相談窓口を設けています。
こうした地域の公的情報を補足資料として案内すれば、来日後に本人が自分で情報を探しやすくなります。

ただし、松戸市の資料を見せるだけで、支援計画に基づく会社側の説明や支援が終わるわけではありません。
あくまで地域情報は、必要な説明を理解しやすくするための補助として使います。

事前ガイダンスは前向きな姿勢で臨む

出入国在留管理庁の運用要領では、本人が事前ガイダンスの内容を十分に理解するためには、少なくとも3時間程度行うことが必要と示されています。

しかし、単に3時間話し続ければ要件を満たすわけではありません。

担当者が同じ原稿を毎回最初から最後まで読み、本人はほとんど質問しない。
この状態では説明した記録は残っても理解できているかは分かりませんし、説明担当者と通訳者の負担も大きくなります。

そこで、同じ内容を説明するのであれば録画やAIツールで代替できないかと考える方がいるかもしれません。
しかし、要領上は対面またはビデオ通話などで相互にやり取りできることが求められているため、動画やAIはあくまで補助として設計するのが安全です。

説明後は質問と理解できていない点を記録する


事前ガイダンスが終わったら、「説明済み」と記録するだけでなく、本人から出た質問や、追加説明が必要だった点を残します。

出入国在留管理庁が「事前ガイダンスの確認書」の参考様式を公開しているので、最新の様式と支援記録の保存方法を確認し、実際に説明した内容と食い違わないようにしてください。

記録を残すことには、次回の受入れを改善する意味もあります。

複数の外国人から寮費について同じ質問が出るなら、寮費に関する説明や資料が分かりにくい可能性があります。
最初のうちは時間がかかるかもしれませんが、徐々に説明担当者の経験だけに頼らない、会社として使えるガイダンスへ改善できます。

経験は会社の財産になる

事前ガイダンスの準備には時間がかかります。
それでも、入社前にお互いの認識をそろえておけば、働き始めた後の「聞いていた話と違う」を減らせますし、説明担当者や通訳者にとっても、毎回同じ文章を最初から作り直す必要がなくなります。
定型部分は共通資料にまとめ、個人ごとに変わる雇用条件や住居、支援担当者を差し替える形にすれば、準備する箇所も分かりやすくなります。

生まれた時間は本人からの質問や職場での受入れ準備に使えるようになり、結果として外国人本人が不安を言葉にできる時間を増やすことにもつながります。

自社支援それとも登録支援機関に委託?

自社支援が可能な会社であっても、通訳、説明資料、支援記録をすべて社内で準備するには人員が必要です。
もし担当者が通常業務と兼任し、受入れのたびに資料を作り直している場合は外部へ相談する価値があります。

登録支援機関へ特定技能外国人支援の全部を委託する場合は、事前ガイダンスを含む支援の実施を任せることができます。
ただし、委託先によって、対応言語、説明方法、企業独自の就業ルールへの対応、本人からの質問への答え方は異なりますので、費用だけでなく、実際の進め方を確認しましょう。

また、行政書士には在留資格申請と関係する書類、雇用条件や支援計画との整合性、申請前に確認すべき事項などを相談できます。
登録支援機関としての支援業務を行っているかは、行政書士事務所ごとに異なりますの事前に確認が必要です。

ネット上の記事を読めばおおよその準備はできますが、自社で何をどう説明するか、現在の体制で自社支援が可能か、動画やシステムをどこまで使えるかは、個別の確認が必要です。
この部分が、費用を払って支援を受ける意味になります。

まとめ

特定技能の事前ガイダンスでは、次の点を確認しましょう。

  1. ガイダンスはなるべく特定技能雇用契約の締結前に行う
  2. 実施者と支援体制を決める(自社支援、登録支援機関に委託)
  3. 本人が十分に理解できる言語で説明する
  4. 対面またはビデオ通話などで質疑応答を行う
  5. 雇用条件、支援内容、生活上の注意を具体的に伝える
  6. 外国人からの質問と理解度を記録する

事前ガイダンスは会社が義務で行う時間ではなく、会社として新たな課題を見つけるきっかけにもなり得ますので、ぜひ前向きに臨みましょう。

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参考情報

執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所代表