はじめに

1号特定技能外国人との定期面談を予定したところ、「面談は必要ない」「仕事が忙しいので受けたくない」と断られることがあります。
こちらからの連絡に返信がない、日程調整を何度も先延ばしにされるといったケースもあるでしょう。

このとき注意したいのは、本人が断ったという事実だけで、定期面談を実施しなくてもよいと判断しないことです。
定期面談には仕事や生活上の困りごとだけでなく、労働関係法令への違反や人権侵害が起きていないかを継続的に確認する役割があります。
面談を拒む背景には、言葉の不安、上司への遠慮、面談への誤解などが隠れている可能性もあります。

この記事では出入国在留管理庁が公表する運用要領等を前提に、定期面談を断られた場合の確認手順を受入れ企業・登録支援機関の実務に沿って整理します。
制度や様式は改定されることがあるため実際の対応時には最新の公表資料も確認してください。

定期面談は3か月に1回以上実施する支援項目

1号特定技能外国人に対する支援では「支援責任者または支援担当者が、本人とその監督的立場にある者の双方に対し、3か月に1回以上の頻度で面談すること」とされています。

本人との面談は単なる近況確認ではありません。
雇用条件と実際の働き方に違いがないか、職場で不当な扱いを受けていないか、生活上の支障が生じていないかなどを確認する機会です。
法令違反などを把握した場合には、関係する行政機関への通報が必要となることもあります。

そのため「本人が面談を希望していない」という理由だけで面談を実施しない場合注意が必要です。
本人の申出があったことと、定期面談という支援項目をどのように実施するかは、切り離して考える必要があります。

面談に応じない理由を確認する

面談に応じない理由を確認すると、日程・言語・場所などの条件が合っていないことがあります。
「拒否」と記録する前に、本人が何に抵抗を感じているのかを具体的に確かめましょう。

本人の反応背景として考えられること検討できる対応
忙しいので時間がない勤務時間との重複、残業、休日の予定複数の日程を示し、勤務先とも調整する
日本語で話すのが不安質問を理解できない、回答を誤解される不安本人が十分に理解できる言語や通訳を用意する
上司の前では話したくない人間関係の心配本人と監督者の面談を分け、落ち着いて話せる場所を用意する
面談の目的が分からない評価面談や叱責の場だと思っている支援のための面談であることと確認事項を事前に説明する
対面では受けたくない移動負担、体調、場所への抵抗本人の同意を得たうえでオンライン面談を検討する

本人に理由を尋ねる際は、回答を強要するのではなく、希望する言語・日時・実施方法を選べるようにすることが大切です。
一度返信がなかっただけで「拒否」と決めつけることは危険です。

面談の目的とプライバシーの扱いを説明する

外国人本人が面談を断る理由の一つに「話した内容がそのまま会社へ伝わり、不利益を受けるのではないか」という不安があります。
特に支援担当者と会社の担当者が同じ場合や、過去の面談に上司が同席していた場合は本音を話しにくくなることがあります。

面談を依頼するときは少なくとも次の点を本人が理解できる言語で説明すると誤解を減らしやすくなります。

  • 定期面談は1号特定技能外国人への支援として行うこと
  • 仕事、生活、健康、人間関係などの状況を確認すること
  • 本人と監督的立場にある者への面談は別々に行うこと
  • 法令違反や重大な問題が疑われる場合は必要な対応を取ること
  • 通訳が必要な場合は手配できること

「形式だけなので、ここに署名してください」と説明して済ませるのは適切ではありません。
面談を実施していないのに、実施済みのような記録を作ることも避けるべきです。
面談の目的を理解してもらい、本人が話せる条件を整えることが大切です。

本人の同意があればオンライン面談も検討する

出入国在留管理庁の運用要領では面談の相手が同意している場合、テレビ電話など互いの表情を確認しながら会話できる方法によるオンライン面談も認められています。
ただし、オンライン面談を一方的に指定するのではなく、本人の同意を確認することが前提です。

また、職場の共有スペースから参加させると周囲を気にして話せない可能性があります。

オンラインで実施する場合は、次の条件を整えておくとよいでしょう。

  • 本人がオンラインでの実施に同意している
  • 双方が顔を見ながら会話できる
  • 本人が周囲を気にせず話せる場所を確保できる
  • 通訳が必要な場合に対応できる

オンライン面談の結果、職場での圧力や本人の安全に関わる問題が疑われる場合はオンラインだけで終わらせず、対面での確認や関係機関への対応を検討する必要があります。

依頼経過と本人の回答は具体的に記録する

面談が予定どおり実施できなかった場合は「本人拒否」と一言だけ残すのではなく、いつ、誰が、どのような方法で依頼し、本人がどのように答えたかを具体的に記録します。
本人の申出により支援を実施しなかった場合も、その申出を記録し、保存することが重要です。

記録しておきたい項目は次のとおりです。

記録項目記載例・確認内容
面談を依頼した日時9月10日(依頼ごとに記録)
連絡方法対面、電話、メール、チャット等
使用した言語日本語、母語、通訳の有無
提示した選択肢複数の日程、対面・オンライン、面談場所
本人の回答可能な限り本人の言葉に沿って記録
説明した内容面談の目的、オンライン面談の条件等
監督者面談の状況実施日、面談相手、確認した内容
次の対応再連絡日、面談予定、社内での確認事項

記録は後から帳尻を合わせるためのものではなく、本人の状況を把握し、どのように実施へつなげようとしたかを示す資料です。
本人に署名を求める場合も内容を理解できる言語で説明し、無理に署名させない配慮が必要です。

「本人の申出」と「支援を実施できない状態」を混同しない


公表資料上、支援計画にある支援を本人の申出により実施しなかった場合は、その申出を記録して保存する扱いが示されています。
一方で、定期面談について本人が一度拒否すれば以後の実施義務が当然になくなるとする説明は確認できません。

そのため「本人から断られたので記録だけ残せば問題ない」と判断するのは危険です。
拒否の理由、働きかけの回数、代替日程やオンライン面談の提案、本人の安全や就労環境に懸念がないかなどを踏まえて判断する必要があります。

また、支援計画に基づく支援を実施することが困難になった場合は、特定技能所属機関が行う届出が関係する可能性があります。
どの届出が必要かは支援の委託関係、未実施の経緯、継続期間などによって異なるため、個別の事情を整理したうえで、最新の運用要領や地方出入国在留管理局の案内を確認してください。

本人が拒否しても監督者面談は行う

定期面談は特定技能外国人本人だけでなく、その業務を監督する立場の人に対しても行います。
本人との面談が実施できなかったからといって、監督者側の面談まで実施しない場合は注意が必要です。

監督者との面談では勤務状況、遅刻や欠勤、業務上の変化、賃金や労働時間、職場での人間関係などを確認します。
ただし、監督者の説明だけで本人の意思を代替したことにはなりません。
監督者から得た情報と本人への働きかけの記録を分けて保存する必要があります。

次回の3か月後まで放置せず、拒否の背景に応じて再連絡の日を決めましょう。
急な欠勤、賃金未払い、暴力・威圧、パスポートや在留カードの取上げなど、重大な問題が疑われる場合は通常の面談日程の調整とは別に、速やかな事実確認と関係機関への対応を検討します。

まとめ

特定技能外国人から定期面談を断られた場合は、まず拒否の背景を確認することが重要です。
日程、言語、面談場所、上司への遠慮などが原因であれば、条件を整えることで実施できることがあります。

また、本人の同意があれば互いの表情を確認できるオンライン面談も選択肢になります。
その際もプライバシーを確保し、必要に応じて通訳を用意します。
面談を実施できなかったときは、依頼日時、連絡方法、本人の回答、提示した代替案、今後の予定を具体的に記録しましょう。

また、本人面談が難しい場合でも、監督的立場にある者との面談まで止めるべきではありません。
「拒否された」という結果だけでなく、本人が安心して話せる条件を整え、実施に向けてどのように対応したかを残すことが支援の実効性を高めます。

参考情報

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執筆・監修:ビッグアロー行政書士事務所